第15回 教えるための「道具」に気を使っていますか?実践! 専門知識を教えてみよう(2/4 ページ)

» 2008年08月01日 08時30分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

「実験器具が少ない」ことはデメリットなのか?

 といっても、「実験器具が少なくて面白くなかった」→「だから、十分な数の器具を揃えるべきである」ということを言いたいわけではありません。短絡的な結論を出す前に、実験器具が少ないことがどんな影響をもたらすかを考えてみましょう。

  1. 1人で器具を占有できないので、グループワークを強いられる
  2. 当然、自分の考えですべての実験ができるわけではない

 といったあたりがその「影響」です。例えばここから「共同作業を通じて社会性を育むことができるというメリットがある」と主張するのはさすがに無理があります。なぜなら、「社会性を育む」のはわざわざ理科実験の時間にやらなくてもいいことだからです。

 現実には、子供にこの種のグループワークをやらせると(大人であっても同じですが)、一部のリーダー的な子供の声に皆がひきずられて、控えめな子はどうしても「お客様」状態になりがちというデメリットも大きいものです。現に私はその「控えめな子」でした。理科実験の時間はあくまで理科実験の時間なのであり、「理科知識の習得」という観点でメリット・デメリットを評価すべきです。「社会性」などという雑音を入れてはいけません。

 それでは、「グループの仲間と意見を交わす機会が増えるため、自分では気がつかなかったことに気がつくチャンスが増えるメリットがある」という主張はどうでしょうか? こちらであれば、確かに理科実験というテーマそのものに直結するメリットですから、一理あります(ちなみに詳細は略しますが、指導する教師にとっては「実験」の場が減ればそのぶん安全管理がしやすくなる、というメリットもあるものの、今回この面については考えません)。

 とはいえ、やはり「実験器具が少ない」ことのデメリットは間違いなく大きなものです。1人1人が自分の考えで実験をすることができないわけですから、「自分はAという条件で試してみたいのに、なかなかその機会が回ってこない」という事態になりがちなわけです。これは明らかにデメリットと言えます。

 となると、実験器具が少ないことのメリットもあるものの、しかしやはりデメリットも当然あるわけです。さて、どうやってこの両者の折り合いをつけたらよいのでしょうか?

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