その1 誰が最も論理的?ビジネス力1分間トレーニング

スキマ時間に「ビジネス力」を鍛えよう――書籍「1分間トレーニング」シリーズがBiz.IDのコンテンツになりました。通勤時間や待ち時間などの「スキマ時間」を活用して、1問1分で問題を解いていきましょう。

» 2008年08月05日 08時30分 公開
[西村克己,ITmedia]

Question

 伊藤物産の経営会議では、アパレル分野への新規事業をどうするか、議論が盛り上がっています。しかしなかなか合否を決定する意見が出てきません。

 さて、下記の中で論理的な説得は何番でしょうか?(複数回答可)

  1. 先代会長なら今回の新規事業提案は反対すると思います
  2. 必要な500億円の資金を銀行は貸さないとのことです
  3. わたしの経験から言って成功は間違いありません
  4. わが社のブランド力があれば何でもできます

Answer

今回の問題は『論理力1分間トレーニング』の1問目から出題

 論理的な説得とは、誰もが納得することが必要です。「わたしの経験によれば」というような、個人的な主観的判断材料では、説得材料に不十分なことがあります。

 (1)の先代会長なら反対するというのは、先代会長を引き合いに出して虎の威を借りていますが、単なる個人的見解です。(2)の必要な資金を銀行は貸さないというのが事実であれば、新規事業ができない説得材料になるでしょう。(3)の経験や(4)のブランド力は抽象的で説得には不十分でしょう。回答例は(2)です。

解説:「論理的」とは筋道を立てて考えること

 論理的とは、筋道だっていることです。ことを論理思考、筋道を立てて話すことを論理的な話と言います。筋道が立つということは、筋道に矛盾がなく、第3者も納得できるものである必要があります。論理的であれば、論理的でないよりも、説得力を高めることができます。

 「わたしの経験から」というのは、経験が具体的に第3者に伝わらないので、結論に至った筋道が明らかではありません。またブランド力というのも、既存事業ではある程度効力があっても、新規事業で通用するかどうか不明です。

 必要な資金調達できないというのは、新規事業を行うための障害になります。したがって中止せざるを得ないという結論に説得力があります。ただし、あらゆる手段を使っても資金調達できないという条件がつきます。

 いつも顔を合わせて心が通じている間柄であれば、論理的でなくても相手を説得できるかもしれません。しかし、初対面の人や、ビジネスパートナーを説得するためには、論理的に筋道だっていて、納得できるものである必要があります。近年、論理思考のニーズが高まっています。

著者紹介 西村克己(にしむら・かつみ)

 岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

 主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。



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