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» 2009年03月24日 18時00分 UPDATE

創造する人々:相手の立場でブレスト――「コスプレチャット」の開発者に聞く (1/3)

相手の立場で話ができれば、話し合いはもっと効果的になるかも――。そんな機能を実装する創造的なチャットシステムの開発者を取材した。

[IDEAPLANT,ITmedia]
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 ○○の立場で発言してみてほしい――。簡単な要望のようだが、なかなか難しかったりするのが、相手の立場での発言。特に匿名のユーザー同士がやり取りするネット上では誰が誰の立場なのか分かりにくい。

 そんなネット上のコミュニケーションのあり方に一石を投じる興味深いアイデア(研究成果)が、北陸先端科学技術大学(以下、北陸先端大)知識科学教育研究センターの西本一志教授と大学院生の王慧氏が開発した「Cosplay Chat(コスプレチャット)」だ。

 もちろん(?)画面の前に座る人が実際にコスプレするのではない。このシステムを一言で表すと自分自身が「ある立場の人」を設定してその立場になってチャットするというものである。

集団の持つクセ

 少しだけ前置きから入りたい。通常、人間が顔を突き合わせて、アイデアを出したり、意志決定したりする場合には、人間の集団という存在が持つクセのようなものがある。『会議の科学』などにその特性に関する議論は詳しい。

 極めて単純に言えば、対面式会議には良いところもあるが、必ずしも賢明な営みとは言えない事態も起こる。対面式では、テーマについての専門知識の多寡よりも、社会的に地位の高い人が会議の重要な役割を果たしてしまう。非対面の会議(主に、オンラインのテキストベースでの会議)はそれを緩和することができる。「匿名性」が主なポイントとなるのだ。

 もちろん匿名性には良い面と悪い面がある。匿名だということで無茶苦茶な発言や目標に向かわないで脱線をし続ける参加者が問題となる一方、良い面としては、参加者に自由な雰囲気をもたらす。

「何者にもなれる(=コスプレ)」

 コスプレチャットは、そうしたオンライン会議システムのメリットをもっと生かそう――つまり、もっと発散的で、より幅広い視点で会議ができる仕組みにしよう――という意図のもと、「何者にもなれる(=コスプレ)」という仕掛けを内蔵している。

 仕組みはこうだ。

  • 1人の人が、複数のハンドルネームを登録できる(会議中も増やせる)
  • 発言は、ハンドルネーム1つを選択して、内容を投稿する(実名も可)
  • 他人に対して“強制的に”ハンドルネームを押し付けられる

 これらの仕掛けにより、会議の場で自分が複数の人格を持てるわけだ。また、発言について、自分の意図しない立場を人から与えられ、その立場に扮(ふん)して発言をすることになる。

 通常、会議では「さっきの自分とは違う意見を言う」のは難しい。本人が観点を切り替えることの難しさ以上に、ほかの参加者から非難されるからだ。また、発言がある場合でも十分な考慮ができていないうちには、気軽に出さないでおこうと思いがち。突き抜けた意見や多様な観点での発言が出てきにくい。このシステムでは積極的な立場変更の仕掛けを用意して、人が広い観点で考えること、発言することを促進するのである。

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