相手の立場でブレスト――「コスプレチャット」の開発者に聞く創造する人々(2/3 ページ)

» 2009年03月24日 18時00分 公開
[IDEAPLANT,ITmedia]

押し付けられた立場の発言をしないと……

 2人でデモンストレーションを行ってもらった。研究室にある2台のPCで、オンラインチャットが繰り広げられる。

 入力欄にハンドルネーム(立場名)を書き込むと、即座に新しいハンドルネームでチャット開始。まず、どの発言者で発言をするかを選び、ついで発言内容をチャット欄に書いて投稿する仕組みだ。今回のデモでは2人しか参加していないはずだが、チャット画面上には、いろんな立場の人の発言が出てきてにぎわっている(ように見える)。

 すると、ある瞬間「押し付けられたメッセージ」というポップアップウィンドウが立ち上がった。手元の画面には「退職者」というハンドルネームが……。そして、自分のハンドルネームは選択できなくなる。

 押し付けられた立場での発言を実行するまでは、ほかのハンドルネームが使えないのだ。押し付けられた人はまず、その立場で考えてみて発言をすることになる。

 相手に「○○の立場になって考えて発言をしてみてほしい」というときに、過去の相手の発言を選択して「○○(立場名)」と入れると、相手にその立場(ハンドルネーム)が押し付けられる。自分の過去の発言に自分で立場を押し付けて自分に強制的に考えさせる、という使い方も可能だ。



通常の対面式会議をより効果的に

 このシステムの特におもしろい点は、相手に「立場」を押し付ける機能。だが、不特定多数のユーザー同士で使った場合は、悪用や不誠実な対応で予想通りにならない可能性もあるだろう。「押し付けまくる人」と「不誠実な対応」である。

 「押し付けまくる人」がいた場合は、その人以外全員が、発言しばりを受け続けて、議論が進まない状態や恣意的な誘導が起こる可能性がある。これでは会議が崩壊する。

 もう1つの「不誠実な対応」は、具体的に言うと「押し付けられた役割をまじめに演じないこと」だ。「○○」という立場を押し付けられた場合に回答内容をシステムが判定するわけではない。そういうルールを自主的に守る、いわば紳士協定なわけだ。なので、押し付けられた立場でのコメント欄に「あああ」といった入力でも通ってしまう。あるいは、検討をした跡のうかがえない発言、例えば「とにかくいい感じにしたらいいと思います」といったコメントでお茶を濁してしまう人も防げない。

 従って、まったくの公開の議論で使うのではなく、通常の対面式会議をより効果的にする用途で使う方が効果的だろう。つまり「悪意の参加者」を排除するためにコストを掛けるよりも、「よりよい知識創造を行うために、効果的な仕掛けを使いたい参加者」たちに使ってもらうべきだ。開発を担当した西本教授も、こうした参加者を想定しているため、上記の「場が崩壊する状況」は、ほとんど起こらないという。被験者の評判は好評だが、もちろん、これらの問題を最小化するようなシステム改善も検討中だ。

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