インタビュー
» 2010年05月14日 19時40分 UPDATE

ひとりで作るネットサービス【最終回】:Webサービス発ラジコン経由――iPhoneアプリ「TwitCasting」にたどり着いた赤松さん (1/2)

モイ! という合図が特徴的なiPhoneアプリ「TwitCasting」の開発者である赤松さん。元々は「あとで読む」や「フレッシュミーティング」の作者でもある。紆余曲折を経てたどり着いたiPhoneアプリの開発に迫る。

[田口元,Business Media 誠]
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 今回で47回目を迎える連載「ひとりで作るネットサービス」だが、ついに最終回となった。最後は「あとで読む」「フレッシュミーティング」「Joker Racer」「TwitCasting」など、さまざまなサービスを立ち上げてきたサイドフィードの赤松洋介さんを取り上げる。

 Webサービス、ラジコン、iPhoneアプリ――次々と新しい技術をマスターしてきた赤松さん。「生活を変えるサービスとは何か?」について彼の考えを聞いた。


st_aka11.jpgst_aka12.jpg 左から「あとで読む」「フレッシュミーティング」

2日で飽きちゃうけど、コピペはしない

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 「新しい技術を勉強するときはとりあえず本を買いますね。そこに載っているサンプルをかたっぱしから打ち込んで理解していきます。ただしわたしの場合、限界は2日。2日経つと飽きてしまうので集中してやります」。新しい技術を体系的に学びたいときは、Webで検索してサンプルコードをコピー&ペーストするようなことはしないという。「それだと頭に入らないですよね。やっぱり“ベーマガ方式”(※)が最強です」と赤松さんは言う。

ベーマガ:電波新聞社が1982年から2003年まで刊行していたPC情報誌「マイコンBASICマガジン」の略。プログラムリストを掲載し、読者は自分自身でPCにプログラムを入力できた。

 ここ数年、赤松さんがマスターしてきた技術は実に多岐にわたる。「あとで読む」「フレッシュミーティング」などを運用していくには、Webプログラミングのほかにデータベース、サーバ管理、SEOなどの知識が必要だ。またネットを介してラジコンを操作できる「Joker Racer」ではそれらに加え、映像配信、マイコンの制御、ハードウェアの小型化技術などが不可欠だった。そして最近手がけているiPhoneのみで映像配信とTwitterができる「TwitCasting」ではiPhoneアプリ開発のノウハウが必要になる。

 「App Storeに申請するときにはこのインタフェースではダメですよ」「遅延なく映像配信するにはこの技術とこの技術の組み合わせが一番です」「ラジコンの小型化をするにはこのメーカーのこの部品が世界一だと思います」。赤松さんと話しているとそうしたノウハウがぽんぽんと出てくる。彼なりの仮説に基づき、次々と興味の幅を広げていった結果だ。

 ネットが日常生活に浸透してくるにつれ、Webサービスの土俵はWeb以外のプラットフォームに急速に広まってきている。モバイル、iPhone、iPad、そしてそのほかのさまざまなハードウェアデバイス。こうした多岐にわたるプラットフォームを見据えつつ、いかに大きなビジネスを仕掛けていくか。赤松さんは着々と知識を蓄えつつ、次の一手を探る日々だという。

 しかし、もちろんここに到るまでにはさまざまな苦労があった。

行き詰まってラジコン――Joker Racer

st_aka13.jpg 「Joker Racer」※現在は運営を中止している

 「実のところ、行き詰まってラジコン、というのが正直な考えでした」、WISH2009で大賞をとり、海外のカンファレンスでも好評だったJoker Racerを手がけたときのきっかけを赤松さんはそう語る。「それまでは法人向けに効率良くWebサービスを販売することを考えていました。海外の企業でいうと37Signalsのようなビジネスが理想です。人数は少なくてもネットを使って販売することで売上は青天井、といったモデルです」

 売上は青天井――そうした思いで立ち上げた「フレッシュミーティング」は、だが思ったほどうまくいかなかった。「日本だと法人向けのビジネスはやはり営業が大事というか、どれだけWeb上で宣伝しても『説明しに来てよ』と言われてしまいます。そうしたモデルはわたしの理想ではありませんでした」

 「このままではいけない」。そう思った赤松さんは一旦目先を変えてみることにした。「思いっきり参入障壁の高いところに行ってみようと思ったのです」。そこで取り組んだのがデバイスだった。リアルなデバイスをネットで制御する技術は手がけたことがなかった。車が好きだったこともあり、題材はラジコンにしてみた。秋葉原でいろいろ調べては試行錯誤し、ようやく思い通りにデバイスを制御できるようになった。「リアルなデバイスがネットを介して動き出すという経験は、Webで人が集まってくるのとは違う感動がありました」。

 そうした経験から生まれたJoker Racerが目指していたのはネットを通じての個人課金だった。「例えばピラミッドの横で自分がラジコンを操作できたら楽しいじゃないですか」。世界中にJoker Racerのスポットを作り、世界中の人とラジコン競争をしながらさまざまな国を見て回れたら、その10分間に対してお金を払う人がいるのではないか、と考えたのだ。

st_aka09.jpg オフィスにはJoker Racerで走らせたラジコンがたくさん

 ただし、試算をしてみるとなるべくたくさんのラジコンを走らせなくては採算がとれないことが分かった。「そこで、できるだけラジコンを小さくすることにしました。この小型化の技術が大変でした……」。また世界中から映像配信するには遅延なく通信をさせなくてはならない。「映像と音声をどう配信するか。いくつもの技術を1つ1つ試しては最適な組み合わせを試す日々でした」

 ハードウェアやサーバの最適化を行いつつ、試験運用をするため、新たにオフィスも借りて実際にラジコンを走らせる日々が始まった。まだまだ試験段階だったが、Engadgetなどにも取り上げられたおかげで海外からのアクセスも多かった。しかし運用をしていくうちに解決できない問題も浮かび上がってきた。「まず、無線LANの帯域における制限から、1部屋に10台ほどが限界という問題がありました。そしてメンテナンスコストの問題です。ラジコンを充電したり、ひっくり返った車を戻したりといった運用をするにはどうしても人手がかかってしまうのです」。

 目先を変えてみたはいいが、どうにもうまくいかない。Joker Racerのこれからについて悩む日々が続いたが、そうしている間に世の中は大きく動きつつあった。プラットフォームとしてのiPhone、オープンなコミュニケーションの基盤としてのTwitterはもはや無視できない存在になっていた。

 そして2009年末、1つのiPhoneアプリが登場した。それを見た赤松さんは再び、大きく方向転換する決心をするのである。そのアプリとはiPhoneからUstream配信を可能にする「Ustream Broadcaster」だった。

「モイ!」がうざいかも(笑)――TwitCastingでライブ配信

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 「(Ustream Broadcasterを)見たときは衝撃的でした。こう言ってしまうと身もふたもないのですが、Joker Racerで実現しようとした『世界中から映像配信してコミュニケーション』はこれだけで実現できてしまうことに気づいたのです」。iPhoneで誰もが映像配信――これで大きく生活が変わるのではという予感がしたという赤松さん。さっそくUstream以外の生放送アプリを調べてみると3つほどしかなかった。「よし、この分野でトップになろう」。幸い今まで培ってきた技術がそのまま流用できることに気づいた。あとはiPhoneアプリの開発について学ぶだけだった。

 「実際いじってみると思ったよりiPhoneアプリの開発は簡単だということがわかりました。SDKがとにかくよくできているのです。しかもOSにアニメーションなどの効果が組み込まれているので誰でもそれっぽいものが作れてしまいます」。早速、映像配信のアプリを試作してみたところ簡単にできてしまった。しかしこれをどう広めていくかが課題だった。

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