「すべてを記憶する」の次の100年を作るヒントとは?Evernote Trunk Conference(1/3 ページ)

8月18日、「Evernote Trunk Conference」はサンフランシスコ市内のギャラリースペースを会場に朝9時から夜7時まで開催。Evernoteの最新情報と開発者によるツールを紹介するなど、Evernoteがエコシステムを作り始める第一歩のイベントとなった。

» 2011年09月02日 12時50分 公開
[松村太郎,Business Media 誠]
イベント前のロビー

 Evernoteに「トランク」というコーナーがあるのをご存じだろうか。ここには、スマートフォン向けのEvernoteに対応するアプリやWebサービスだけでなく、日本で出版している多数の書籍、キングジムのショットノートやぺんてるのairpenなど、デジタルからアナログまで、Evernoteを便利にするものをすべてピックアップしている。

 

 今回のイベント「Evernote Trunk Conference」の主要なテーマは、このトランク。Evernoteの周辺ツールを作る開発者やベンダーに集まってもらうためのイベントで、AppleでいうところのWWDCのような位置付けと言える。8月18日、サンフランシスコ市内のギャラリースペースしたてた会場には約300人が集まり、朝9時から夜7時まで熱気に包まれた。


順調に成長するEvernote、中長期の課題は?

買収したSkitchのメンバーとEvernoteのリービンCEO

 まず始めに、フィル・リービンCEOがEvernoteの現状をプレゼンテーション。登録ユーザーは1250万人で、1年前の2倍以上を記録し、ここ30日間で約450万人が増加、1日あたり4万2324人が新規登録している計算となっている。そして有料会員であるプレミアムユーザーは56万8677人で昨年から5倍以上に増えている。

 ご存じの通り、Evernoteはフリーミアムモデルを採用している。つまり無料会員を多く集め、その中から有料会員に転換するユーザーから収益を得るというモデルだ。

 現在有料のプレミアムユーザー率は4.5%。書籍『FREE』で紹介していたモデルケースは有料会員の割合が5%、Evernoteも間もなくこの「5%ルール」に届きそうだ。Evernoteは「すべてを記憶する」というコンセプトの通り、使っていけばいくほど、自分にとっての価値が高まっていくサービスである。長期ユーザーほどプレミアムに転換する割合が高いことから、5%ルールを超える有料会員を獲得するまでになるかもしれない。

 Evernoteの好調さと開発状況、そしてユーザーとの対話が充実している様子がCEOであるリービン氏のスピーチから伝わってくる。しかし長期にわたってEvernoteを活用している筆者のようなユーザーは、ため込んだ膨大なノートの中からどうやって情報を効率的に見つけ出すか、見つけた情報を活用するか、という課題に直面しつつある。

Fast Ever開発者のrakko entertainment 若林大悟氏。北海道からご参加

 この問題意識はおそらくEvernoteも持ち合わせていて、だからこそ今回のようにEvernoteの開発者を集めて関連ツール開発をサポートしたり、中期計画として発表した「Evernote Gallaries」を披露したのではないだろうか。

 Evernote GalleriesはEvernoteのアプリケーションのポータルページのような存在で、自分の好きなノートで構成されるパーツ(ギャラリーと呼ぶ)を作り、自由に画面に配置できるようにする機能だ。ちょうど、iGoogleのウィジェットで自分のスタート画面を作るような感覚に近いのではないだろうか。

 ギャラリーの例では、例えば最新のスナップショットだけを集めたもの、特定のタグのコレクション、マップ上に位置情報を配置したものなど。ギャラリーはHTML5とJavaScriptといった標準的なWeb技術を使って作ることができ、2011年11月からデベロッパーキットを配布し、12月にはユーザーも使えるようにする計画だ。技術を見れば、スマートフォンやタブレットなどでギャラリーが扱えそうな点は察しがつく。モバイル環境で自分の好きなEvernote内の情報活用をすぐに呼び出せるようになると、非常に便利そう。溜めたノートの活用へリーチしはじめたEvernoteの成長は、当分続いていくのではないだろうか。

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