震災時に信頼、政府かTwitterか――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」5000人が白熱した特別講義(5/6 ページ)

» 2012年06月22日 16時15分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

3.11で日本が学んだ教訓

サンデル もう1つ、皆さんに質問をしたいと思います。東日本大震災から日本はどういう教訓を学んだかということです。

原発事故について、あなたの立場に近いものを選択してください。

(1)原発事故は地震と津波によるもので、不可避だった

(2)原発事故は政府と原子力産業の癒着が原因だった

サンデル 大多数の人は(1)の立場ですね。それでもかなり人、少数派ではありますが(2)の立場を示してくれました。それではまず(1)の人。原発事故は地震と津波のせいで避けられなかった立場の人の意見を聞きたいと思います。

アキコ 正直、(2)に投票したくなかったからという理由だけで(1)を選択しました。東日本大震災の後に私がすごく自覚したのは、うーん、何というか、何でも自分のこととしてではなく、誰かのせいにして、誰かにめんどくさいことを押しつけてこれまで過ごしてきたということです。だからもし(2)に投票すれば、それは国が悪かった、政府が悪かった、東電が悪かったと人のせいにすることになります。

 でも、確かに元は震災で、そこにいろいろな管理体制の問題はあったと思うんです。しかしそこを言ってしまえば、じゃあ私たち国民は国や企業をきちんと監視したり意見を本気で言ってきたのかという問題はやはり逃れられないと思います。だから国や東電、他の誰かのせいにするのはすごく楽なんですけど、それでは、今日のテーマである民主主義とか、市民になる/ならないというところには、たどり着けず、本当の議論はこの国では行われないと思います。(会場拍手)

サンデル お名前は? アキコですね。ご意見ありがとうございました。それでは(2)の立場の人、その理由を言ってください。

男性A 原発は非常に危険なもので、われわれは何もなすことができなかった。日本全体で、そういう恐ろしいものの存在自体を許していたことがいけなかったんです。津波があったから、地震があったからと言われていますけど、他にも人間がやることなので、必ず何かのミスで、いつかは事故が全くないというのはないのかなと思います。存在を許していたことが間違いだったんです。

サンデル 分かりました。ご意見ありがとうございました。では他に意見がある人。

男性B 私は世界全体の核産業システムの一部として、日本の原発があると思っています。アメリカやフランス、イギリス、その中での日本。そしてそこに原子力発電所があるんです。

 正力松太郎という人が日本に原発をもたらしたと言われていますが、アメリカが冷戦時代にたくさん核兵器を作った際、そのシステムの一部として日本に導入するということを誰かが、個人かもしれないし、個人の集合の組織かもしれないし、仕掛けたんだと思います。

 偶然というのは世の中にはありえないんですよね。人間が意思をもって何かをしたからこそ、結果が生じているんです。であるので、確かにその国が悪い、政府が悪いといって被害者意識に凝り固まるのはよくないと思います。しかし世界全体の中でそういうシステムを作った人間がいるのを確認意識として持った上で、なぜそういうことが起きてしまったのかを考えないといけないと思っています。

サンデル ありがとうございます。では他の人、意見ありますか?

マサツグ 僕は(2)の立場なんですが、その理由はアキコさんと一緒です。他の人のせいにしたくありません。国や東電の問題など、さまざまなことはその気になれば僕らが変えられます。僕らが賛成しないことを通そうとするのならば、ちゃんと手を挙げて変えるべきです。誰かの思惑だという問題ではなく、僕らがきちんと決めて意見を反映させていく、そういう意味で僕は(2)の立場に上げました。

サンデル ちょっと説明してください。非常に強力な主張だと思うのですが、もっと知りたい、あなたの意見を知りたいんです。お名前は? マサツグですね。では教えてください。

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