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» 2012年06月22日 16時15分 UPDATE

5000人が白熱した特別講義:震災時に信頼、政府かTwitterか――マイケル・サンデル教授の「民主主義の逆襲」 (1/6)

ベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』筆者のマイケル・サンデル教授による特別講義。第2部の後半では電気料金の値上げ問題などをトピックに議論を重ねた。

[上口翔子,Business Media 誠]

 米ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏が5月28日に東京で行った特別講義「ここから、はじまる。民主主義の逆襲」。終盤では「電力料金の値上げ」や「危機発生時に信頼する情報源」をトピックに議論を行った。

電力料金の値上げは許せる? 許せない?

サンデル 原発が再稼働する/しないにかかわらず、代替エネルギーの開発にはそれなりのコストが掛かります。よって東京電力は電力料金の値上げを提案しました。これについて、大きな議論を呼んでいますよね。ということで、皆さんの意見を聞いてみましょう。

東京電力の電気料金値上げについて、賛成ですか? 反対ですか? 電気を使っているのだから、顧客が負担すべきなのは当然でしょうか。もしくは東京電力はまず人件費を減らし、きちんと説明をした上で値上げをすべきですか?

 会場の受講者は、電気料金の値上げについて賛成であれば手持ちのパンフレットの赤面を、反対であれば白面をサンデル氏に向けて示した。

サンデル この質問については、多数の人が反対のようですね。東京電力の電力料金値上げを支持をする人は、このホールの中では少ないようです。ではまず少数派の意見から聞いていきましょう。電力料金の値上げを認める人の中で、自分の立場を説明できるという人、他の人を説得したいといった人はいますか?

コウタロウ 感情論としては、東京電力社員の給料カットや、役員刷新をした上で料金の値上げをすべきだという意見はもちろん理解できます。一方で現実的には、先ほどの原発再稼働の議論でもあった通り、代替エネルギーが見つからない中では原発に多少なりは頼らざるを得ません。

 にもかかわらず、みんなが原発の再開を反対すると、残る選択肢は火力発電やガス発電など他の方法です。中東から高い調達コストで燃料を買い付けてこなければなりません。よってそこは少し議論を切り離して、電力料金の値上げを許容すべきだと思います。

shk_sandel0401.jpg マイケル・サンデル教授

サンデル 電力料金の値上げは不可知の負担を分かち合う方法だということですね。

コウタロウ はい、そうです。

サンデル お名前は? コウタロウですね。今、コウタロウが意見を表明してくれました。少数派の方にプログラムを挙げていましたので、まずはその勇気をたたえたいと思います。次に、コウタロウの意見とは反対だという人、その理由を説明してください。直接コウタロウに向かって意見を言ってください。


だったらね、代わりに払ってください。私の値上げ分を。どうぞ、勝手に払いたきゃ払ってください。早く。

ケン 私は電力料金の値上げに完全に反対です。というのは今、電力料金には2点のポイントがあります。1点目は東電によると、東電の赤字(損失)が私たち個人の電力料金に転化されてしまっていて、今の電力料金の制度では、透明性がありません。例えば原発の建設費だとか、企業の赤字など。それらが全て盛り込まれて個人の電力料金に入ってきてしまっています。なぜ、会社の責任に対しても会社の損失に対しても個人がそれを負担しなくてはいけないのでしょうか。

 それから2点目。代替エネルギーなどの資源はコストが高いという意見もありましたが、例えば新しく発見された米国のシェールガスとか、より安いエネルギー源もあって、まだ試していないものがあります。電力料金の値上げは本当に最後の手段であるべきです。東京電力は何も努力しようとしないで料金を引き上げようとしています。電力料金値上げに賛成をする人には、じゃあ私たちの分も払ってもらったらいいと思います。

サンデル お名前は? ケンですね。ではコウタロウ、まず透明性という議論がありましたので、それに答えてください。

コウタロウ 透明性という指摘に対しては、あまり私は反論の余地を持っていません。おっしゃっているのは、総括原価方式という東京電力に限らず、全ての日本の電力会社が取っている電力料金の決め方です。よって、そこに掛かるコストにいわゆる燃料調達コスト以外のものが掛かっているというのは十分に存じ上げています。

 ただ1点目の反論に関して申し上げたいのは、あなたも電気の消費者ですよね、ということです。そこから逃れられないのに、なぜ値上げをすることに反対できるんですか、ということなんですよ。

ケン 独占体制になっているからです。東電からしか電気が買えないんです。他にも選択肢があれば、もっと信頼性の高い、より良いCSR(企業の社会的責任)のプログラムを持っているところから買いたいですよ。

コウタロウ 電気の代替物ってものは存在しないですよね。例えばあなたがのどが渇いたら、水やコカコーラなどいくつかの飲み物が選択できます。しかし、あなたが消費する電力は、もちろん作る元はもっとエコな方法があるかもしれませんが、電気というものには代替物がそもそも存在しません。だから独占であるのは自然なことではないですか?

ケン 電力料金について平等に料金を課されるかということがポイントではなくて、東電のCSRが重要な問題だと思います。それから代替がないとおっしゃいましたけどアメリカの場合はどうでしょうか。1社だけではない、電力会社のような独占体制はアメリカにはありません。中国にも電力の独占体制はありません。

コウタロウ 電力を自由化したところで電気は電気ですよね。あなたが他のものを、電気以外のものを選べるわけではないじゃないですか。

ケン だったらね、代わりに払ってください。私の値上げ分を。どうぞ、勝手に払いたきゃ払ってください。早く。(会場笑)

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