生き抜く……という意味で、震災の話題を挙げてしまったのは不謹慎だったとも感じている。気を害された人がいれば、この場を借りて深くお詫び申し上げたい。しかし人々の頭からあの出来事が消え去ろうとしているような気がしており、「生きる」ことを考える上でいま一度しっかり頭に焼き付けて頂きたく、触れさせて頂いた。あくまでこの記事では、「働く」ことを中心に据えた上でのお話であることをご理解頂きたい。
何らかの事情で会社にいられない状態になった場合、当然ながら会社に頼らずに生きていかなければならない。「転職すれば」という人もいるだろうが、転職だって100%の保証などどこにもないのだ。
では、そのために必要なものは何なのか。恐らく一番に挙がってくるのは、専門知識や技術、経験といったところだろう。確かにそれらは仕事をする上で武器になる。しかし私は、それ以上に必要なものがあると思っている。それは「覚悟」である。
どんな苦境に立っても、あきらめず突き進むことができるか。固定概念を捨て、周囲の意見を聞き入れながら工夫ができるか。家族の人生を背負い、何があっても護り抜くことができるか。
人は何かを決断する際、大なり小なり覚悟を決める。新卒で会社に入るときだって、好きな人に告白するときだって同じだ。しかしその決断が自分の人生に与える影響が大きければ大きいほど、必要になる覚悟も比例して大きくなるのである。だから多くの人は「挑戦」ができないし、それほど大きな覚悟が必要となるケースを想像しない。
「いま会社がなくなったら、あなたはどうするか?」
一度、真剣に考えてみてはいかがだろうか。できることなら、想像し得る中で最悪のケースを想像してみてほしい。そうしたら、また自分に問いかけてみよう。
「それを乗り越える覚悟はあるか?」
副業しながら、会社では得られない経験や人脈を得る。それももちろん、自らの力で生き抜くためには大切だろう。私もそれは大賛成だ。しかし過去の経験や人脈を生かして独立した起業家が、一体どれだけ生き残っているか。それだけで生き抜けるほど、世の中が甘くないことは明白といえるだろう。
私はお金も人脈も、まして専門知識、技術などない状態で独立した。皆さんに問いかけたような状況になったのではなく、あくまで自ら望んだわけではあるが、それでも今は生きている。しかし明日の保証などないし、常にリスクと隣り合わせだ。それでも前を向けているのは、「何があっても、なんとかする」覚悟があるからに他ならない。
これからは、さらに“個”としての力が重要となるだろう。それは就職や転職で求められる話だけではなく、何が起きてもおかしくない世の中だということだ。常に会社という盾に隠れて無難に時を過ごそうという人は、会社からだって求められなくなるのではないだろうか。結局は会社だって人の集合体なのであるから、各個人が今という社会を生き抜ける人材しかほしくなどないのだ。
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