「社外交流」は迷ったときの良薬――思わぬヒントが得られることも田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年09月12日 11時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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 社外の人や、異なる文化の人と交流することには、つまりは「他流試合」の意味があるだろう。

 私は日頃、人材育成の仕事に携わっており、主にヒューマンスキル分野の研修を担当している。公開講座(所属企業に関わらず、誰でも申し込み、参加できるもの)と一社向け講座(特定企業向けに行うもの)は、それぞれに一長一短がある。

 一社向けの場合は、自社特有の話題や事例を話し合いのテーブルに載せることができる。込み入った話も社員同士であれば可能だ。ただ、一社向けの場合は、互いの根底に流れている価値観やものの見方、考え方が似通っているので、思考に大きなブレイクスルーは起きづらい。共感し合えるメリットはあっても、「そうそう、そうだよね」「それ、仕方ないよね」と自分ごとにならず、「制度が変われば」「経営者の考えが変われば」などと他責思考に陥りやすい(そうならないよう、講師は「他の見方はないか?」「こう考えた場合はどうなる?」などと突っ込んではいくのだが)。

 公開講座の場合は、一つのクラスに複数の企業、複数の職種、多様な年齢の人が集まる。互いの言っていることを理解し合うのも困難なことが多いが、一方で、「自分のものの見方がすべてではないのだな」「自分が普段何気なく使っている言葉は他社の人には伝わらないのか」と、思わぬ発見をすることも多い。そして、自分とは異なる文化、背景を持つ他者に、自分の仕事を説明するのがかなり難しいことを実感できる。説明したところで、相手が理解してくれるとは限らないから、話し方には工夫が必要になる。

 例えば「リーダー向け研修」という公開講座であれば、「他社の人でも自分と同じような問題にぶち当たり、悩んでいることも一緒だなあと安心した」などと共通項を見つけて、ほっとすることもある。でも、たいていの場合、「自分とは異なる他者」とのやり取りの中で、「自分の狭いものの見方に反省した」「他社の人と話していたら、自社では当たり前と思ってやり続けていたある業務を、撤廃してしまってもよいのだと気付いて目から鱗でした」などという、大きな気づきを得る場面のほうが多いようだ。。

 仕事で悶々とする出来事がある場合、もちろん社内の誰かと語り合うのにも意味はある。助けられることもたくさんあるだろう。ただ、チャンスがあるなら、あるいは、チャンスを作って、社外の人と関わってみるとよい。思ってもみなかったヒントや気づきを得られることがあるからだ。

 育て上手なマネージャは「部下を誰かに紹介する」という行動をとることが多いそうだ。上司や先輩の立場にある人は、自分が社外と交流を図るだけではなく、自分の部下や後輩を誰かに紹介するということも意識したい。

 部下の立場の人は、上司や先輩に誘われたら、「ぜひ、行ってみたい!」「参加してみたい!」と前向きに出てみるとよいだろう。

 ところで、初対面の時、会話に困ることが多いが、とにかく、聴き手に徹することが成功の秘訣だと思う。私が好んでする会話は、相手のキャリアを訊くことだ。

 「これまでにどんな道を歩んでこられたのですか?」

 この質問に答えてくれない人はあまりいない。相手のキャリアを聴くことで、その人の考え方のベースになっているものが理解できることもある。社外の人との交流では、自分の話をするよりも相手の話を聴くことが重要だと思う。もちろん、相手が自分に興味を持ってくれたら、こちらも自己開示する。聴くだけ聴いて自分のことはナイショ、というのは失礼だから。そこから関係を構築していけばよいと思う。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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