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» 2013年11月13日 09時00分 UPDATE

トップ1%だけが実践している集中力メソッド:羽生善治さんが考える「集中力の基盤」とは? (1/2)

集中力が問われる職業の1つがプロ棋士。プロの棋士の憧れといえば、羽生善治さんですが、羽生さんは車を運転しないそうです。その理由は?

[永田豊志,Business Media 誠]

 日本将棋連盟がプロの棋士161人に聞いたあるアンケート調査によると、「将棋を始めて1番変わったことは何か?」という問いに、何と95人もの人が「1つのことを集中して考えられるようになった」と答えているそうです。集中力のなさに悩んでいる人は、将棋を検討してみてもいいかもしれません。

 プロの棋士の憧れといえば、羽生善治さんです。羽生さんは、小学校1年のときに将棋に魅了され、没頭。その後、25歳で将棋界初の7タイトルを制覇し、史上最強の碁士と呼ばれた人です。

 ところで羽生さんは、対局のときに10手とか15手に対する枝葉の手も含めると、1つ指すたびに100手から1000手くらいを読むのだといいます。しかし、驚くべきはそのスピードです。1つの手を1秒とか数秒で検討していく。そして、1つの変化に対して1000手くらいを数十分から1時間以上かけて集中して考える。名人戦ともなれば、こうした集中を朝9時から夜9時まで、丸二日間続けるわけです。並大抵の集中力ではありません。

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 「集中力の基盤は根気。根気を支えるのは体力」

 羽生さんは対局が終わると体重が3キロも落ちているといいます。これは脳が想像以上にカロリーを消費しているからです。脳は体重の2%前後くらいしか占めていません。それでも、全体のカロリーの20%を使うのです。だから、脳をフル回転させれば体重が落ちるというのも納得できる話です。

1000手先を読む脅威のシミュレーション機能

 ハーバード大学の心理学者ダン・ギルバート(Daniel Gilbert)によれば、その人間の脳は200万年の歴史の中で3倍の容積になったそうです。私たちの脳は進化の中で大きくなっただけでなく、その構造も大きく変化しました。大きくなったときに新しく加わった構造の1つとして前頭前皮質があり、そのおかげで、人間はほかの動物にはない「頭の中だけでシミュレーションする」機能を身に付けることができました。実際にやってみる前に、頭の中であれこれ試すことができるのです。

 羽生さんが短時間で1000手も先が読めるということは、頭の中でものすごいスピードのシミュレーションを行っているということになります。

 ちなみに、羽生さんは車を運転しません。運転しないのは、免許がないからでも、車が嫌いだからでもありません。羽生さんの場合は、頭の中の将棋盤がいったん動きだすと止まらなくなる。あまりにも集中しすぎて運転するのが危ないからだそうです。すごい話です。

 ところで将棋には、対象に没入する「フロー体験」を呼ぶ条件が備わっています。ルールは明確、勝つためのシナリオは無数にあり複雑。しかし、フローの条件でもう1つ重要なのは、目標の難易度と技量のバランスです。あまりにも強い相手とばかり対局をやって負ければ、将棋への情熱は消えるに違いありません。

 羽生さんが将棋を始めたときには、このことを道場主がよく分かっていたのでしょうか、どんどん上に上がって行く熟達の楽しみを持たせるため、ちょっとした工夫があったといいます。

 羽生さんが最初に入った道場は、最低が7級だったにもかかわらず、道場の席主が昇級の楽しみを覚えてもらうため、あえて14級からスタートさせました。どんどん技量とともに級が上がる楽しみは、さらに将棋の研究へと羽生少年を駆り立てたのでしょう。小学5年のときには五段まで上がっていました。道場を終えても、家で将棋を指し、両親と妹の計3人による「連合軍」と羽生少年1人が対戦するというもので、さらに連合軍が不利な展開になれば将棋盤を180度回転させて指継ぐという特別ルールもあったとか。とにかく、将棋への没頭と熱意、それにともなう技術の上達は半端ないものでした。

 羽生さんと並ぶ名将棋士の谷川浩司さんも将棋を始めたころ、年の離れたお兄さんと指していたそうですが、谷川さんのお兄さんはあえて負けることがあったそうです。小さな山を超えさせることで、谷川少年に勝つ楽しさ、前進する喜びを与えていたのではないか、と思われます。

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