労働時間法制の見直しで「年休消化」を企業の義務に注目したい法改正の動向

労働時間法制の見直しは厚生労働省にとって長年のテーマ。労働時間法制の今後の検討について、「フレックスタイム制」「ホワイトカラー・エグゼンプション」などの4つを重点検討項目として提示しています。

» 2014年12月18日 10時47分 公開
[企業実務]

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 本記事は企業実務のコンテンツ「これからの法改正の動き」から一部抜粋・編集して掲載しています。


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 労働時間法制の見直しは厚生労働省にとって長年のテーマになっているようです。

 厚生労働省は、労働政策審議会労働条件分科会で、労働時間法制の今後の検討について、次の4つを重点検討項目として提示しています。

長時間労働抑制策・年次有給休暇の取得促進策

 長時間労働抑制策として、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金のあり方、時間外労働の限度のあり方、年次有給休暇の取得促進策等が挙げられています。

 中小企業も大企業と同様に月60時間超の時間外労働については割増率を50%に引き上げる、一定時間を上回る労働を完全禁止する、といった対策が検討されています。

フレックスタイム制

 フレックスの清算期間の延長、清算の際の事後的な年休取得、完全週休2日制の場合における月の法定労働時間の特例の3つが挙げられています。

 1カ月を超える単位を清算期間として認めるフレックスタイム制の創設、所定労働時間に達しなかった場合に年次有給休暇を取得したものとする、といった案が挙がっています。

裁量労働制の新たな枠組み

 対象業務、健康確保等のための措置、手続の見直しが挙げられています。

新たな労働時間制度

 いわゆる「ホワイトカラー・エグゼンプション」です。法的効果、手続、対象業務(時間ではなく成果で評価される働き方)、対象労働者(一定の年数要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者)、健康確保等のための措置が挙げられています。

義務付けは「数日分」から

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 もっとも、「健康・安全確保」を図る見直しというスタンスは一致していても、個別の施策について労使の委員の意識の隔たりは大きく、議論がすんなりとはまとまりそうにありません。そんななかでも進みそうなのが、年次有給休暇取得促進策の拡充です。すべての企業に対して、最大で年20日の権利が発生する年次有給休暇のうち、社員の希望を踏まえたうえで、数日分の取得日を企業が指定し、一定日数を強制的に消化させるというものです。

 また、未消化の社員が多い企業に対しては、罰則規定を設けることも検討します。

知っておきたい法改正動向

企業年金の適用拡大

 厚生労働省の社会保障審議会企業年金部会が、企業年金制度の見直しについて検討しています。個人型の企業年金に第3号被保険者等の加入を認める、年金資産を転職時に持ち運びしやすくする、中小企業に限定した簡易型の確定拠出年金を創設するなど、使い勝手の向上が図られます。

株主総会のあり方の見直し

 経済産業省は株主総会の開催時期の分散化、企業情報開示のあり方等についての議論を目的に、「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」を立ち上げました。この研究会には「株主総会のあり方検討分科会」と「企業情報開示検討分科会」が設けられ、見直しの一定の方向性について2014年度中に報告書にまとめる予定です。

「総合取引所」実現への動き

 証券取引所と商品取引所を統合し、株式や金融商品、穀物等をまとめて取引できるようにする「総合取引所」実現についての動きが活発になっています。自民党財務金融部会は総合取引所についての金融商品取引法の改正について、来夏までに進展がなければ議員立法で進める方針を示しています。

「介護職」の人手不足対策

 介護業界の人手不足が不安視されるなか、厚生労働省は介護職員確保のための施策を検討しています。介護福祉士法等を見直し、現行の初任者研修よりもハードルの低い資格を設ける、外国人活用のために介護に関する在留資格を整備する、といった案が議論される予定です。

郊外団地を都市部に集約化

 国土交通省は都市再生機構法(UR法)の改正作業を進めています。老朽化が進む郊外の団地を都市の中心部に統廃合・集約化しやすくすることで、コンパクトシティの推進につなげたいとしています。


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