この機能って必要? そう感じても「G-SHOCK」が欲しくなる理由水曜インタビュー劇場(G-SHOCK公演)(1/6 ページ)

» 2015年09月09日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]
高価格帯のG-SHOCKが売れている。写真は「SKY COCKPIT(スカイコックピット)」

 カシオ計算機が好調である。ここ数年の売り上げをみると、リーマンショック以降はいわゆる“右肩上がり”。2014年度の純利益は過去最高の264億円、1株当たり利益も過去最高を計上した。ぐーーーんと伸びている背景を調べてみると、同社の看板商品「G-SHOCK」の健闘ぶりが目立っているのだ。

 G-SHOCKといえば、衝撃に強い、水に強い、落下に強いなど、とにかくタフ。若い人たちが身につける“やんちゃな時計”といったイメージを持っているかもしれないが、最近はちょっと違うのだ。タフでありながら、高級感があって、しかも高性能。サラリーマンの小遣いでは、おいそれと買うことが難しい価格帯のモノが売れているのだ。

 なぜ売れているのか……さらに調べていくと、気になる数字があった。2014年に発売されたG-SHOCKの種類(色を含めて)を、ひい、ふー、みー、よーと数えていくと、150ほどに達したのだ。1年間の営業日が240日だとすると、約1.6日に1本の時計が世に出ていることになる。

 いくらなんでもつくりすぎでしょ、そんなにたくさんの種類を売っていたら売れていないモノもあるのでは? と思われたはず。同社に聞いてみると「いまはどれもこれも売れているんですよ。粒ぞろいで……」とのこと。中でも、前述したちょっと高めのG-SHOCK(Master of G)が好調だという。

 Master of Gのパンフレットをみると、「陸・海・空をテーマに、それぞれの極限シーンに特化したタフネス性能を備えている」と書いてある。その中のひとつ、陸に強い「MUDMASTER GWG-1000」(以下、マッドマスター)は「土砂や瓦礫(がれき)が積もる厳しい“陸”の環境でミッションを行うレスキュー隊をイメージした」そうだ。泥が時計の中に入らない、ドリルの振動にも耐えられる、目印のない場所で役立つ方位計測機能、天候の悪化を予測できる気圧計測機能などが搭載されている。

 ここで、疑問がひとつ。土砂や瓦礫が積もるような過酷なシーンで作業する人にとっては便利な時計だろうが、満員電車に揺られながら通勤をしているサラリーマンにとって必要なのだろうか。ほとんどの商品は、次のような公式が成り立つはず。「機能をどんどん高める+ターゲットを絞りこむ=市場は縮小する」。しかし、G-SHOCKの場合は違う。市場は縮小しておらず、逆に拡大しているのだ。そんな謎を解くために、同社でG-SHOCKの全製品を担当している斉藤慎司さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

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