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» 2016年01月04日 06時15分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」 2016年新春特別編:今後期待の省燃費技術は? (1/5)

ここ数年の自動車業界を振り返れば、「省燃費技術の時代だった」ということになるだろう。そうした中にあって押さえておきたい自動車推進装置は3つに代表される。

[池田直渡,ITmedia]

 「お正月特集記事として『2016年の自動車業界はこうなる』というテーマでお願いします」というのが編集担当からのリクエストである。しかし年が変わったからと言って、そんなに簡単にクルマが変わるわけがない。そこで2016年というより、過去数年から、今後数年にわたってどんな変化が起きていくかについて書きたいと思う。

省燃費の時代

 ここ数年の自動車業界の流れを後世振り返れば、それは「省燃費技術の時代だった」ということになるだろう。2010年代は、世界各国で厳しさを増す排ガス規制へ適合させつつ、いかに少ない燃料で多くの距離を走るかという争いを世界中のメーカーが繰り広げてきたし、まだしばらくその流れは続きそうだ。

 では、その戦いにどんな技術が投入されてきたか。もちろん、本来、省燃費技術はトータル技術である。エンジンはもちろん、シャシーの軽量化や空気抵抗の低減、各部摩擦損失の低減、タイヤの低転がり抵抗と言った細かい技術の積み重ねによって成り立っている。多方面作戦を継続し続けるメーカーの体力が問われる戦いだ。

 しかし矛盾もある。グラム単位で重量を落とす極限の技術改革を進めながら、他方で商品性確保のために豪華装備をどんどん搭載する。国内では例が少ないが、シャシーのアルミ化という手間もカネもかかる方法でようやく稼ぎ出した数十キロが、電動シートの搭載で簡単にチャラになってしまうような理不尽もある。技術者はきっとそこに大いなる矛盾を感じているのだろうが、「商品力」という錦の御旗には逆らえない。自動車メーカーにとって、クルマづくりは理想の追求ではなく、第一義的には経済活動だからだ。

ハイブリッドが有利な理由

 さて、そうしたさまざまな省燃費技術の核として、あるいは象徴として、エンジンやモーターなどの「自動車推進装置」の改善があるわけだ。2016年に関して言えば、ハイブリッドディーゼル小排気量ターボの3つを主流だと見ておけばいいだろう。3つあると言われれば、それぞれの長所、短所を知りたくなるのが普通だろう。要するにどれがいいのか。

 まずはハイブリッドの現状だ。日本の交通事情を前提にして考えるなら、ハイブリッドは現時点で最も現実的な答えだと思う。欧州のように高速道路を主体とした長距離高速巡航という需要は、乗用車を前提にする限り、日本にはあまりない。どちらかと言えば、都市部を中心としたゴー&ストップであるとか、止まらないまでもブレーキとアクセルを交互に踏み換えるような、低速域で速度が絶えず変化している運転モードが多いのだ。この日本の運転モードの特徴については、これから記述する全ての推進装置にとって重要な前提なので、以後を読む際、念頭に置いてほしい。

 ハイブリッドの特徴は、エネルギー回生にある。エンジンが作り出した運動エネルギーを、減速時に発電機で電力に変換して回収し、そのエネルギーをモーターで再利用する。余剰の運動エネルギーをもう一度ガソリンに戻すことはできないから電気エネルギーに変換するわけで、電気に変換した再生エネルギーを利用するためにモーターが必要なのだ。

 「だったら最初から電気自動車にすればエンジンがいらなくなる」。それは正論なのだが、電気を使い果たしたときの充電時間がかかり過ぎるという問題がまだ解決できない。5分で充電できるようになるまで、そのビハインドは解消できないだろう。なぜならそれは「いつでも、どこへでも移動できる」という自由なパーソナルモビリティとしては看過できない欠陥になるからだ。だからこそハイブリッドが普及したわけだ。

 ハイブリッドはエネルギー回生こそがその存在意義なので、速度変化の大きな場所で最も真価を発揮する。逆に不得手なのは、速度変化のない定速巡航だ。そういう場面ではハイブリッドシステムの出番がない。だから長距離定速巡航が走行距離のほとんどを占める大型トラックはハイブリッド化しないし、トラックのハイブリッドは都市内配送を受け持つ2トン以下のモデルが多いのだ。

日本のハイブリッドの代名詞とも言えるプリウス。第四世代となる新型プリウスのハイブリッドシステム 日本のハイブリッドの代名詞とも言えるプリウス。第四世代となる新型プリウスのハイブリッドシステム
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