「ワキ汗」ビジネスがこの1〜2年で拡大している秘密スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2016年07月12日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「ワキ汗市場」ブレイクの機は熟した

 このように「ワキ汗は病気」という啓発活動、インナー市場の汗吸収機能のトレンドが定着しているところに加え、「Ban汗ブロックロールオン プレミアムラベル」の好調さである。「ワキ汗市場」が大ブレイクの機は完全に熟したといえる。

 「ふーん、女の人もいろいろ気にしなくちゃで大変だね」と男性諸君はあまり興味のないテーマかもしれないが、実はこれは「対岸の火事」ではない。

 国から「病気」に認定されたものは、遅かれ早かれ我々の「身体の悩み」として否応なしに向き合わなくてはいけなくなる。現代社会はそういうシステムになっているのだ。

 かつて喫煙者と呼ばれた人は「ニコチン依存症」、ハゲは「男性型脱毛症」という病気になった。あがり症は「SAD(社交不安障害)」、おしっこが近いのは「過活動膀胱」、胸焼けは「逆流性食道炎」という。中年太りは「メタボリックシンドローム」と診断される。このような「病気」を放置しないのが、立派な大人である、というのがいまの風潮だ。

 「病気」ではなくても放置をすれば、「ハラスメント」だと糾弾されるものもある。その代表が、ジアセチルという成分の発見によって注目を集めた「ミドル脂臭」だ。この臭いをマンダムが啓発をしたことで、40〜50代のおじさんたちは、電車やオフィスで女性が不快に感じるという自分の体臭のケアをしなければいけなくなった。

 テラテラした顔のおじさんたちは「脂性」と言われて、シートや洗顔剤、化粧水などでケアもしなくてはいけない。いまの日本おいて、「健康なおじさん」でいることはかなり難しいのだ。

 世の男性たちがワキ汗の悩みを相談するため病院へ殺到する未来もそう遠くないのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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