理論で分かる きゃりーがブレイクした理由キャズム理論が進化している(3/6 ページ)

» 2016年12月02日 07時37分 公開
[永井孝尚ITmedia]

キャズムを超えれば、一気にブレイクするが

 ところで、ファッションには人によって「目立ってナンボ」と思うタイプと「目立つのはイヤ」と思うタイプがいる。前者はイノベーターまたはアーリーアドプターで全体の16%の少数派、後者はアーリーマジョリティ以降の人で全体の84%の多数派だ。

 「目立つのはイヤ」という人は、いくら「目立ってナンボ」という人が青文字系の服を着てても、「私は違うし」と思ってなかなか真似しない。自分と同じタイプが着るようになって、はじめて着るようになる。でも「目立つのはイヤ」という人は、そもそも新しいファッションには手を出さない。だからなかなか多数派には広がらないのである。

 このように「目立ってナンボ」と「目立つのはイヤ」の多数派の間には、なかなか超えられない大きな谷がある。これをマーケティング用語で「キャズム」と呼ぶ。英語で「谷」という意味だ。

 なぜキャズムができるのか? それはリスクの考え方が正反対だからだ。

 「目立ってナンボ」と思う人たちは「少々のリスクは大歓迎」と考える。しかし「目立つのはイヤ」という人たちは、「リスクは困る!」と考える。この「リスクは大歓迎」の少数派と、「リスクは困る!」の多数派の間にある、なかなか超えられない谷が、キャズムだ。キャズムを超えれば、新しいファッションは一気にブレイクする。青文字系ファッションは、きゃりーがブレイクしたおかげで、一気にキャズムを超えて広がった。

 しかし一方で、なかなかキャズムを超えられずマイナーなままのファッションも多い。なぜこの違いが生まれるのだろうか?

 実はキャズムを超えて商品をブレイクさせるためには、それを仕掛けていく方法論がある。ブームは「待つもの」ではなく、「仕掛けるもの」なのだ。この方法論を教えてくれるのが、経営学者ジェフリー・ムーアが提唱した「キャズム理論」だ。

 ではキャズムを超えるにはいかに仕掛ければよいのか? きゃりーがいかにキャズムを超えたかを考えてみよう。

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