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» 2017年01月10日 06時00分 UPDATE

“いま”が分かるビジネス塾:AIに投資を任せる時代 市場はどう変わる? (2/3)

[加谷珪一,ITmedia]

人間が投資すると負けてしまう理由は「心理」

 金融機関のカウンターなどで営業担当者といろいろとやりとりしながら資産運用を行っていた従来のやり方と比較すればかなりスマートになった。特にリバランスについてほったらかしにできるのは、忙しいビジネスパーソンには便利かもしれない。将来的には、もう少し大きなリスクを取った運用や、短期売買についても、AIがサポートするようになるだろう。

 では、金融分野において広範囲にAIが普及した場合、資産運用の世界はどう変化するのだろうか。プラス面としてまず考えられるのは運用の安定化である。冒頭でも触れたが、資産運用はなぜか8割の人が負けてしまう厳しい世界である。

 ちなみに日本株の過去50年間の平均リターンは約6%で推計リスク(想定される年間当たりの変動)は±25%である(GPIFの公表)。詳しい投資理論は省くが、要するに日本株に投資をすれば、平均で年6%のリターンを得ることができ、1年間の株価の振れ幅は約3分2の確率で±25%以内に収まっているという意味である。

 もしそうなら、多くの人がそれなりの投資リターンを得ていてもよさそうなものだが、現実は違う。そうなってしまう理由は、ほとんどの人が株価下落時の心理的負担に耐えられず、慌てて株を売ってしまうからである。

photo 心理的パニックが存在しないAI投資なら成績はかなり向上する?

 AIを使った自動運用にはこうした心理的なパニックは存在しない。当初に設定したルールに従って黙々と売買するだけなので、著しく損失を拡大する可能性は低くなるだろう(株価の急落時にどう売買するのかは、事前に設定できるパターンが多い)。

 筆者自身、億単位の資産を運用する個人投資家でもあるので実感としてよく分かるのだが、こうしたパニック売りがなくなるだけでも、投資成績はかなり向上する。AI投資が普及すれば確実に市場の安定に寄与することになるだろう。

 ただ、現在のAIは既存の情報の中から、ある特定の法則性を導き出すことを得意としているが、情報が存在しない未来のことについてシナリオを立てるといった作業にはあまり向いていない。こうした作業は人間の方が圧倒的に高い能力を発揮する可能性が高い。

 また深層学習の機能についても、最終的にはAI自身が学習の方法を学んでいくことになるが、当初は人間がある程度、学習の方向性を定める必要がある。当面の間、投資におけるAIの位置付けは、人間が考え出した投資手法をうまくサポートする形にならざるを得ないだろう。

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