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» 2017年01月10日 08時00分 UPDATE

スピン経済の歩き方:だからトランプに負けてしまう トヨタの急所 (4/5)

[窪田順生,ITmedia]

「最強の使用人」がいない危機

 では、どんな「危機」なのか。

 先ほども少し触れたように、この小説は武田剛平が「ヒーロー」として描かれる。豊臣統一も主人公ではあるが、銀の匙(さじ)をくわえて生まれてきた御曹司に一般読者は共感しにくい。

 その武田は、モデルと目される奥田碩氏同様、米国事業拡大のため政財界へ積極的にロビー活動を行い、摩擦回避などの「対米工作」を推進し、トヨトミ自動車の「危機」を回避していく。一方で、武田は豊臣家をたてて、その「旗」を最大限活用し、社員の士気も高めていく。小説内で、武田剛平が「豊臣家最強の使用人」と表現されている所以(ゆえん)だ。

 それを踏まえると、この小説の裏テーマは、「豊田家最強の使用人・奥田碩」の再評価である可能性が高い。だとすれば、その裏には「今のトヨタには奥田氏のような人物がいない」というメッセージがあるようにもとれる。

 もちろん、覆面作家・梶原三郎氏はトヨタがモデルだとも公言していないのでなんとも言えないのだが、そう思う根拠がある。

 実は、『トヨトミの野望』の作者は「覆面」だが、それとは別に原案協力をしたのではと囁(ささや)かれる人物がいる。ジャーナリストの井上久男氏だ。

 1995年からトヨタウォッチャーをされている井上氏は、トヨタのみならず自動車業界に精通しており、さまざまな記事を寄稿されている。『トヨトミの野望』が出た直後も『日経ビジネス』でトヨタとスズキの提携について書いているのだが、そこに気になる記述があるので引用させていただこう。

 『現在のトヨタ、スズキの両社の経営体制に通じる「番頭不在」だ。(中略)英二の代は、「合理化の鬼」と呼ばれた花井正八、章一郎は奥田らが支えた。しかし章男を支える「大物番頭」は不在だ』(日経ビジネス2016年11月14日)

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