20年新設の幼小中一貫校「軽井沢風越学園」とは?楽天創業メンバーの本城氏が発起人

» 2017年02月23日 13時00分 公開
[伏見学ITmedia]

 大手インターネット企業、楽天の創業メンバーである本城慎之介氏らが作る一般財団法人 軽井沢風越学園設立準備財団は2月22日、2020年4月に開校を目指す幼小中一貫校についてメディア向け説明会を開いた。

幼小中一貫校「軽井沢風越学園」の開校を進める本城慎之介氏(中央)、岩瀬直樹氏(右)、苫野一徳氏 幼小中一貫校「軽井沢風越学園」の開校を進める本城慎之介氏(中央)、岩瀬直樹氏(右)、苫野一徳氏

 「学校法人 軽井沢風越学園」は長野県北佐久郡軽井沢町に新設予定。風越は地名。本城氏が理事長を、東京学芸大学大学院准教授で学級経営論専門の岩瀬直樹氏が副理事長を、熊本大学准教授で教育哲学者の苫野一徳氏が理事を務める。幼稚園(3〜5歳)は各学年12人前後、小・中学校(6〜15歳)は各30人の規模でスタートする。既に土地の取得は終わっており、今後は学校法人設立や学校設置の認可取得などを進めていく。

 同学園の特徴は、従来の画一的なカリキュラムや一斉授業、固定的な学年・学級制などにとらわれず、新しい学校や公教育のあり方を提案することを目的に、幼稚園、小学校、中学校の12年間で一貫教育を行う点だ。「同じ順序で一斉に学ぶような教育はシステムとして疲労している。その結果、落ちこぼれや吹きこぼれといった問題が起きている」と苫野氏は現状を指摘する。

 今までは皆と同じようにすることが多くの学校で求められてきたが、「一人一人違うのは当たり前だということを大前提に、子どもたちが混ざり合っていくことで、もっと健やかな学びがあるはず」と本城氏は話す。そこで同学園では「同じから違うへ、分けるから混ぜるへ」をモットーに、学年などの垣根を越えた“異年齢学級”をベースにした環境を用意する。例えば、中学生が小学生に勉強を教えたり、小学生と幼稚園児が一緒に遊んだりといった具合だ。

軽井沢風越学園設立準備財団のWebサイト 軽井沢風越学園設立準備財団のWebサイト

 学び方にも工夫を凝らし、「自己主導」「協同」「探究」の3つをテーマに掲げる。自己主導は、何を、どのように、どこまで学ぶかを、子ども一人一人が自分で設定すること。これによって個々人の裁量で学習のスピードや内容を決められる。小学校教諭として長年この手法を現場で実践してきた岩瀬氏によれば、小学生でも中学の数学問題を次々と解いたり、一方で、今までなら授業についていけなかった子どもが自分のペースで学習できるようになったことで、結果的に落ちこぼれのような問題がなくなったという。

 協同については、遊びを通じて子ども同士が関係を深めることで、それが学びを支える関係にもなるということである。「例えば、分からないことをほかの子どもに聞くのが恥ずかしいとは思わずに、気兼ねなく『教えて』『助けて』と言えるようになるはず」と本城氏は効果を説明する。

 探究は、自分や自分たちの問いを自分なりの仕方で、答えにたどり着くことである。

軽井沢風越学園が考える概念 軽井沢風越学園が考える概念

 実はこの3テーマは、2020年からの次期学習指導要領がうたう「主体的」「対話的」「深い」学びとの親和性も高いため、同学園での取り組み成果やノウハウがいずれ多くの学校にも横展開できると考える。

 同学園設立の経緯に関して、小学校でのプログラミング教育や英語教育がスタートする次期学習指導要領や大学入試改革など、2020年に大きな教育改革が行われることが大きいという。発起人である本城氏は楽天を退社後、横浜市立東山田中学校で校長を務めたほか、2009年からは軽井沢町で野外保育「森のようちえんぴっぴ」の運営と保育にかかわるなど、現在は教育の道を歩んでいる。本城氏は「以前から学校を作りたいという思いはあったが、まさにタイミングとして今だと、1年ほど前から考えるようになった」と力を込めた。

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