「承認されたい!」女性の欲望で育つシェア経済ファッションシェアリングに注目(1/2 ページ)

» 2017年05月23日 07時05分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 「シェアリングエコノミー」という言葉を聞く機会が多くなってきた。モノやスキルを「所有」ではなく「シェア(貸し借り)」するという考え。欧米や中国では急速に進みつつあり、米シリコンバレー出身の「Airbnb(エアビーアンドビー)」や「Uber(ウーバー)」は一般的なサービスとして利用されている。

 日本ではやや出遅れているが、女性をターゲットに絞った「ファッションシェアリング」は成長中。ラクサス・テクノロジーズが提供するブランドバッグシェアリングサービス「ラクサス」もその1つだ。

ブランドバッグをシェアする「ラクサス」

「ビジュアル」「AI」で成約率アップ

 ラクサスはブランドバッグを返却期限なしでレンタルできる月額6800円(以下、いずれも税別)のサービス。15年2月にスタートし、エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、ブルガリなど、男性でも聞いたことがあるような52の高級ブランドのバッグを1万6000種類そろえている。

 ターゲットは「ブランドバッグを使いたいと思っているが、気軽には買えない層」だ。ラクサスのユーザーの80%が年収600万円以下という。定期的に高級バッグを購入するのはやや厳しいが、レンタルなら気軽に好きなブランドのバッグを利用できる――というわけだ。

 運営するラクサス・テクノロジーズによると、ユーザーの年齢層は20〜50代と幅広く、サービス継続率は95%(5月時点)と高い。ユーザーは約1カ月半に1回バッグを交換し、新しいデザインやブランドを楽しんでいるという。

 力を入れるのは「ビジュアル」。通常、バッグのレンタルといえば、バッグの全体・裏表・細部などをフォーカスしたページをイメージする。しかしラクサスは、洋服とコーディネートした写真も商品ページに掲載している。

コーディネート写真が掲載されている

 「バッグだけが載っているとブランドによって選んでしまいますし、金額が高いものを選ぶ傾向にありました。ですが、洋服に合わせてバッグを表示すると、バッグを持ったときのイメージが浮かびやすく、かつ特定のブランドへの偏りを起こさないことも狙えます。コーディネート写真に切り替えたことで、バッグが予約される率が2.7倍になりました」(広報担当者)

 2種類のAI(人工知能)を活用するレコメンド機能も。「朝日の画像が好きな人はシャネルが好き」といった心理学を応用したテストや、ユーザーのレンタル傾向を観測し、「ミュウミュウとバレンシアガが好きなら、プラダも好き」「グッチが好きならシャネルを好まない」といった傾向を蓄積し、ユーザーの好みに合ったバッグを薦める。

C2Cに横展開、グローバル進出も

 17年1月には、C2Cのブランドバッグシェアサービス「ラクサス エックス」をスタート。ユーザーがラクサスにブランドバッグを送ると、メンテナンスをした上で、他のユーザーにレンタルされる。自分が預けたバッグが貸し出されれば収入を獲得できる仕組みだ。

C2Cサービス「ラクサス エックス」

 5月現在、1万超のバッグが集まった。人気のブランドはルイ・ヴィトンの定番の型で、「昔買ったが今は使っていないバッグを預けて副収入を得たい」「定番のハイブランドバッグを使いたい」というユーザー同士のニーズが合っているという。

 自社でそろえた1万6000種類のバッグに加え、ユーザーから預かった1万個のバッグを保管するとなると、気になるのはコストやリスクだ。

 ラクサスは、自社開発のICタグをバッグに取り付け、同一の大きさの箱に入れて管理することで、管理の効率化や盗難防止を図っている。発送・管理作業に要するスタッフは2人で、人件費の負担も少ない。また、ロボット管理も試験中で、17年中のシステム完成を目指す。

 今後は積極的にグローバル展開を行い、17年はニューヨーク、パリ、ロンドン、シンガポール、台北、ソウルでのリリースを予定する。加えて、ユーザーの好みなどのビッグデータをブランド側に提供するマーケティング支援事業も視野に入れる。

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