近鉄のフリーゲージトレインは「第2の名阪特急」になる?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)
所要時間は、新幹線「のぞみ」の50分に対して倍以上の130分と敵わない。しかし運賃+特急料金は新幹線自由席の5830円に対して4260円と、1500円以上も安い。これがお財布の堅い大阪の人々には好評らしい。新幹線の駅は新大阪で、大阪中心部に行くには乗り換えが必要だけれど、近鉄特急はど真ん中の難波に直行できる。近鉄は2020年に名阪特急に新型車両を投入し、全席バックシェルタイプのゆったりした座席を用意する。スピード以外の全てのメリットをアピールするようだ。
このタイプのフリーゲージトレインを、名古屋〜大阪阿部野橋で運行するというプランはどうだろう。スイッチバックが2回と運用面では面倒だけれど、大和八木〜橿原神宮前の所要時間は10分程度。そもそも大阪阿部野橋方面から橿原神宮で乗り換えること自体が面倒だから、逆向き走行も許容範囲だ。
あべのハルカスや新世界は観光客も増えており、天王寺と新大阪とのアクセスも加味すると、大阪阿部野橋エリアから名古屋方面の需要はありそうだ。伊勢志摩方面も直結できる。近鉄のフリーゲージトレインによって、大阪阿部野橋は今まで以上に近鉄の拠点駅として重要度が増すことになる。
- フリーゲージトレインと長崎新幹線の「論点」
長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)の混迷が続く。JR九州はフリーゲージトレインの導入困難を公式の場で表明した。未完成の技術をアテにしたうえ、線路の距離に応じて地元負担額を決めるという枠組みが足かせになっている。実はこれ、長崎新幹線だけではなく、鉄道路線の建設・維持に共通する問題だ。
- 新幹線台車亀裂、川崎重工だけの過失だろうか
山陽新幹線で異臭を発した「のぞみ34号」について、東海道新幹線名古屋駅で台車に傷が見つかった。JR西日本の危機認識、川崎重工の製造工程のミス、そして、日本車輌製台車からも傷が見つかった。それぞれ改善すべき問題があるけれども、もう1つ重大な問題が見過ごされている。「納品検査」だ。
- 北海道新幹線札幌駅「大東案」は本当に建設できるか
もめにもめた北海道新幹線札幌駅問題は、JR北海道が土壇場で繰り出した「大東案」で関係者が合意した。決め手は「予算超過分はJR北海道が負担する」だった。これで決着した感があるけれども、建設業界筋からは「本当に作れるか」という疑問の声がある。
- 新幹線札幌駅、こじれた本当の理由は「副業」の売り上げ
JR北海道は、当初の予定だった現駅案を頑固に否定し続けた。主な理由は「在来線の運行に支障が出る」「プラットホームの広さを確保したい」としてきた。しかし、真の理由は他にある。「エキナカ、エキシタショップの売り上げが減る」だ。JR北海道の10年間の副業を守るために、新幹線駅は未来永劫、不便な駅になろうとしている。
- 東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。
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