新幹線札幌駅、こじれた本当の理由は「副業」の売り上げ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2018年03月09日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 北海道新幹線の札幌駅問題が3月末に決着する見通しだ。2012年に工事実施計画が認可された案を、15年にJR北海道が「現駅案に加えて、地下案、東側案、西側案を追加」として事実上覆した。その理由は「認可案では在来線運行に支障が出る」だった。しかし、在来線運用の改善策を鉄道・運輸機構が提示しても承服せず、今度は「乗り換えに便利」という地下案を繰り出す。しかし、その地下案もコスト面、安全面で否定された。

photo 札幌駅

 JR北海道はまだ諦めない。18年2月4日、15年の東案を改良した大東案を提示。理由は「現駅案ではホームが狭く、急増する乗客をさばけない」だ。現駅案は2本の線路の間に島式プラットホーム1面を置き、幅は中央部約10メートル、端部が約7メートル。大東案は2本の線路の両側に対向式プラットホームを置き、乗車側の上りプラットホームは約10メートル、下り降車側プラットホームは中央部約14メートル、西端部は約11メートル、東端部は約6メートル。なるほど、と思える。

 地元紙の北海道新聞も「上下分離で将来(旭川延伸時)の乗り間違いを防ぐ」などと小見出しを掲げ、JR北海道寄りの主張を載せる。利便性優位で現駅案を主張する鉄道・運輸機構からの情報は少ない。乗り換えの利便性や建設費を考えれば、現駅案は完成されており、これ以上の利点は挙げられない。JR北海道は必死に新案のメリットを掲げ、マスコミ、札幌市、北海道などへのロビー活動に熱心だ。鉄道・運輸機構は新案のデメリットの材料を持っているけれど、それを表に出そうとしない。見苦しいと思っているのか、何かの圧力だろうか。

photo JR北海道が提案する東案(2)、報道では「大東案」とされる。在来線乗り換えが不便、近隣の建物に影響すると却下された「東案」より、さらに在来線と離れた位置だ(出典:北海道新幹線建設促進北海道・札幌市調整会議資料
photo 鉄道・運輸機構が提出した認可案の見直し結果。在来線プラットホームに隣接し、地下鉄路線2本からも均等にアクセスできる。ただし、新幹線改札とコンコースは地上になり、現在の店舗スペースを壊す形になる(出典:北海道新幹線建設促進北海道・札幌市調整会議資料
photo 鉄道・運輸機構が提出した在来線の設備改良計画。JR北海道の「在来線の運行に影響する」という主張を封じ込めた。ただし、JR北海道の本音はここではなかった(出典:北海道新幹線建設促進北海道・札幌市調整会議資料
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