100人超の社員と約280社を巻き込んだローソンの「発注改革大作戦」30年ぶりの刷新(4/5 ページ)

» 2018年06月29日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

説得するために行った「オペレーションの可視化」

 プロジェクトがスタートした。配送トラックと物流センターの調整を行う物流チーム、メーカーや米飯ベンダーなどと交渉する商品チーム、発注システムをつくるITチーム、オペレーションを全国の店舗に定着させる運営チーム、法的な問題を検討する法務チーム、各エリアを担当するエリア商品部などがそれぞれの役割を果たすことになった。関係する社員数は100人を超えた。

 秦野氏のもとには予想通り「作業時間がねん出できない」「人やトラックが足りない」といった声が次々と寄せられた。週1回の会議で進捗(しんちょく)状況を確認しながら、どうすれば全体最適を実現できるかの決断を迫られた。終盤に差し掛かると、社長も交えて議論を続けた。

 ローソンの要望と関係各社の要望がどうしても相いれないこともあったが、秦野氏はどのようにして解決していったのだろうか。

 「一番のキモは、オペレーションを可視化することです。『時間がねん出できない』というのならば、どの工程でどの程度の時間がかかっているのか、全て洗い出しました。事実を可視化して共有化することで、お互いに具体的な解決策を提案できるようにしたのです」

10年後、20年後を考える

 もう1つ、難しい判断を迫られたときに秦野氏が大事にしたことがある。今回構築するシステムは、10年後、20年後も続くものとなる。安易な妥協をしては自社のビジネスに悪影響がでるだけでなく、関係会社にとっても長期的にマイナスになりうる。「長期的にみて、正しいことを判断しようという気持ちで臨みました」と当時を振り返る。

 これは記者の主観なのだが、秦野氏は非常に論理的で主張すべきことをしっかり伝える性格だと見受けられた。デスクワーク中心の業務と違い、“現場”に近い関係者の利害を調整するには、相手を納得させる強固なロジックを構築し、強い態度で接しないと物事が進まないことがある。秦野氏はこれまで物流センターの立ち上げを担ったり、オペレーションの標準化作業に取り組むなど、現場に近いところでもキャリアを積んできた。こうしたキャリアに加え、秦野氏の性格もプロジェクトの取りまとめを任された背景にあるのだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.