トヨタ自動車が働き方改革にモーターレースを用いるという、非常にユニークな取り組みを行っている。例によって極めて戦略的で高度な話なので、まずは働き方改革の全貌をざっくり分かってもらわないと意味が伝わらないと思う。
そこで今回は予備知識編として、働き方改革の俯瞰(ふかん)的な話を書いてみたい。
働き方改革は、すでに耳に馴染んだ言葉だが「そもそも働き方改革とは何だ?」と問われて明確に答えられる人は少ないだろう。
最初に結論を書いてしまえば、企業の業績を伸ばしながら、個人が幸せに生きていける社会を作ることだ。必要な軸は2本あって「業績」も「個人」も疎かにできない。この2つにバランス良く配慮しながら経営していくことこそが働き方改革である。
2018年の日本経済は、内閣府「首相官邸HP」のレポートなどからざっくり抜き出すと以下のような状況だ。
政府の自画自賛によって「名目GDP47兆円増加、9%成長」とか「ベースアップが4年連続で実現しつつある」など、経済政策の成功を印象付けたい書き方がされているが、詳細に見ていくと「民需は、持ち直しつつあるものの、足踏みがみられる」などと持って回った言い方で渋々実情を伝えている。分かりにくい書き方を整理して並べると、つまりこういうことになる。余談だが、こういうくだらない忖度の多いレポートを止めないと、誰が読んでも分かるものにならない。
良い点
有効求人倍率が高水準
デフレがようやく一段落した
給与もわずかながら上昇基調にある
悪い点
少子高齢化による生産人口の先細り
民需の上昇が弱い
長時間労働の是正速度が遅い
正規と非正規労働の賃金格差
要するに人が足りなくて、長時間労働が常態化している。そういう状況であれば、経済原則に則れば、需給バランス的に人材の奪い合いになって賃金が上がっていくのが市場のメカニズムだ。しかし、仕事は増えているのに肝心の民需は「デフレがようやく一段落した」という程度で、金額ベースで見て思うように上がっていかない。それは物価が十分に上がらないからだ。
つまり、企業が行き過ぎた薄利多売ビジネスになっているから、人は雇いたいが高い給料は払えない。だから「有効求人倍率が高水準」なのに賃金が上がらない。企業だけでなく消費側も含めた経済システムのエラーで、悪い循環にはまっているのだ。
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