1960年代の「集団主義教育」の旋風が吹き荒れるなかで、異を唱えた人も大勢いた。当時の東京世田谷和光学園教頭はこうおっしゃっている。
「個人は無力だ。だから集団で…というのはちょっと飛躍しすぎやしないか。無力だからこそ個人がもっと音楽や美術を鑑賞し、知識を獲得して自分が強くなることが大切だ。それがないと無力感を克服できない。集団を強調するとかえって個人を弱めることがあることも考えるべきだろう」(同紙)
国際比較調査グループISSPが、31の国・地域を対象にして「国への帰属意識」を調べた。そのなかで日本は、「一般的に言って他の多くの国々よりこの国は良い国だ」と回答した人の数でダントツで多く1位で、「他のどんな国の国民であるより、この国の国民でいたい」というのも3位だった。その一方、2014年に内閣府が実施した若者の意識調査では、「自分自身に満足している」と答えたのは45.8%。米、英、仏、独、スウェーデン、韓国など7カ国と比較して少なかった。
日本人という「集団」を強調したことで、「個」が弱くなっている。これこそが我々が集団主義という病に冒されている証左である。
多くの日本人が抱いている、「どうせ日本人の働き方はそう簡単に変わらない」という無力感を克服するためにも、「個人」が強くなならなくてはいけないわけだが、50年間続けられた「みんな一緒」という「呪い」から解き放たれるのは容易なことではない。
我々のようなおじさん世代はもう手遅れかもしれないが、未来を担う子どもたちにはまだ希望がある。
「大縄跳びなんて、やりたい人だけがやればいいじゃん」と誰もが胸を張って言えるようになれば、多くの人が「生きずらさ」を感じるこの国も、きっと変われるのではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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