実は今でこそ日本の小学生の一糸乱れぬ整列や人間ピラミッドなど統率のとれた集団行動が「外国人観光客からも絶賛!」みたいな話になっているが、戦後間もないころは「集団行動が大の苦手」だった。敗戦の反動で、戦前教育を全否定していたからだ。
例えば1963年、神宮第二球場で催された「スポーツの日」というイベントに出てきた子どもたちの行進を見て、瀬尾弘吉文部大臣は「だらしないな……」とつぶやいたという。新聞にもこんな感じで冷やかされる始末だ。
「校庭に集まるのも三々五々。なにをやらしてもダラダラ、バラバラ、戦後の子供に集団性と規律がないというのは定評のあるところだ」(読売新聞 1963年7月1日)
そこで戦前の子どものように、シャキシャキ団体行動ができるようにしよう、ということでこの時期に「集団主義教育」の普及を目的とした「全国生活指導研究協議会」が、東大教授の宮坂哲文氏を中心として結成された。当初は2〜300人程度だったこの会は瞬く間に会員を伸ばし、1963年には2000人にのぼったという。
この風潮がその後の日本の教育を決めたといってもいい。分かりやすいのが、日本人ならば誰もが学校でやらされた「気をつけ」と「休め」だ。
これは軍隊にルーツがあることは言うまでもなく、戦後は中止されていたが、1963年11月に文部省が設けた集団行動指導の手引き指導委員会が「復活」を検討した後、「集団行動の統一スタイル」(読売新聞 1964年5月25日)として全国の小学校に徹底させたのである。
ほかにも、クラスを班に分けて、班長のようにリーダーをつくって、クラスや班で起きた問題についても、各自が責任をもって意見を言い、「みんなで解決をする」といういまの小学校にもつながるスタイルはすべてこの時代に生まれた。
つまり、全員強制参加の大縄跳び教育は、このような集団主義教育の一環として生まれたのである。
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