2018年、日本はかつてないほどのシラスウナギ(ウナギの稚魚)の不漁に見舞われた。完全養殖技術が確立されていない現在、商業用のウナギを育てるには天然のシラスウナギを採り、養殖池に入れて育てるしか手段はない。このシラスウナギの漁獲量が激減しているのは周知の通りだ。
シラスウナギは毎年11月〜翌年4月ごろを中心に、日本や台湾、中国などの海岸を回遊する。ウナギの産地、鹿児島では17年漁期(16年秋〜17年春)578キロだった漁獲量が、今年は192キロと約70%も減った。宮崎では17年漁期は412キロだったところ、今年は約75%減の99キロに終わった。春先になって東日本での漁獲量が伸びたことから少しは持ち直したものの、今年の全国のシラスウナギの採捕量は前年比約4割減の5282キロにとどまっている。
そもそもニホンウナギはIUCN(国際自然保護連合)により絶滅危惧種に指定されている。生息域である日本・韓国・中国・台湾は14年に4カ国(地域)で協議をし、資源保護対策としてシラスウナギの養殖池への池入れ量を、直近の数量から20%減らすこと(日本は21.7トンとすること)で合意した。だが、この年は例年よりもシラスウナギの漁獲量の数字が格段に多かったこともあり、その後の池入れ量は4カ国協議で取り決めた制限を常に下回っている。また、この「20%減らす」という数字にも科学的な背景はなく、規制の意味に乏しい。
18年漁期(17年秋〜18年春)における稚魚の大不漁を救ったのも、ある意味ではこうした「意味に乏しい規制」、あるいは「規制の不在」が原因ともいえる。漁期も終わりに近づいた春先になり、とりわけ東日本でシラスウナギの漁獲量は伸びた。だが、最終的に前年並みの約1240キロが採捕された茨城県の採捕上限は6000キロと、規制としては無意味なものであった。同じく春先になり漁獲量が急増した結果、前年をやや下回る程度で終わった千葉県においては、そもそも採捕上限すら定められていない。
天然ウナギの漁獲量、シラスウナギ池入れ量の推移はいずれも明白な減少を示しているにもかかわらず、当事者である日本政府の腰は重い。今年6月に開催された日中韓台湾関係国・地域非公式協議では「枠を減らす科学的根拠がない(みなと新聞2018年6月11日)」との主張から、規制強化はまたしても見送られた。この非公式協議には、中国は数年前から出席すらしておらず、地域レベルでの多国間協議は、有効な資源管理の場としては全く機能していない。
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