インタビュー
» 2018年08月29日 06時30分 公開

シニアスペシャリスト採用の条件:65歳でネスレに中途入社したベテラン営業マンが輝いている理由 (1/4)

大手メーカーで営業マンとして20年以上働き、50代で起業経験もある石川さんは、65歳でネスレ日本に入社した。上司や同僚にも仕事ぶりが評判だというが、そのわけとは――。

[やつづかえり,ITmedia]

 ある日突然、あなたが働く会社に60歳以上のビジネスパーソンが中途入社して、隣の席にやって来たら、あなたはどのような反応をするだろうか?

 大手メーカーで営業マンとして23年間働き、50代で起業の経験のある石川一成さんは、2018年4月に65歳でネスレ日本に入社した。若手の前でも偉ぶらず、担当する店舗に足繁く通う仕事熱心な姿勢が上司や同僚にも評判だという。

 石川さんのような即戦力となるシニア世代を呼び込もうと、ネスレは今年から60歳以上を対象とする「シニアスペシャリスト採用」制度をスタートした。反響は非常に大きく、「まだまだ働きたい」という意欲のあるシニア層からの応募が多数集まっているそうだ。

ネスレ日本 東京支社 首都圏第一支店の石川一成さん ネスレ日本 東京支社 首都圏第一支店の石川一成さん

 「人生100年時代」と言われる今、定年退職後の過ごし方に漠然とした不安を感じる読者も多いだろう。企業側は、人手不足を補う労働力としてシニア世代に期待する向きもあるが、60歳以降も継続雇用する社員の扱いに苦慮しているという話もよく聞く。

 会社はシニア世代のスキルや経験を生かす環境作りをし、シニア社員は年下の上司や同僚と調和して上手に貢献する――。そんなWin-Winな関係が実現すれば理想的だが、そのためのポイントはどこにあるのか? ヒントを得るべく、石川さんとネスレで常務執行役員 人事総務本部長を務める芹澤祐治さんに話を聞いた。

「若いころのように仕事に燃えたい!」

 鹿児島県出身の石川さんは、故郷の人気者である西郷隆盛のように頑丈ないで立ちが印象的だ。聞けば、学生時代に野球と合気道、社会人になってからはボディビルをやっていたという。体力には自信がある。「会社から要らないと言われるまでは、仕事を続けていきたい」と意気込んでいる。

 石川さんは大学卒業後、国内の大手時計メーカーと乳製品メーカーに合わせて30年ほど勤めた後、50代半ばで友人に誘われて独立した。業務用の洗剤を売る会社を経営していたが、東日本大震災の影響で売り上げが落ち、やむなく会社をたたんだ。その際、石川さんは多額の負債を抱えることになる。自己破産も考えたが、逃げずに働いて返済していく道を選んだ。

 その後、マンションの管理人や入居者の立ち会いなどの仕事をしたが、どうしても物足りなさを感じていた。そんな時に目に止まったのが、ネスレのシニアスペシャリストの求人だったという。

 「以前、メーカーで営業をやっていたときにはかなり仕事に燃えていましたので、もう一度そういう風に働きたいと、営業の仕事を探していたんです。そんな時にたまたまネスレの求人を見つけました。年齢と経験の条件は当てはまっていたので、出すだけ出してみようと応募しました」(石川さん)

 ネスレが18年1月から正式にスタートさせた「シニアスペシャリスト採用」は、60歳以上という条件で幅広い職種での経験者を募集している。石川さんが見つけた求人は、そのトライアル版として昨年末に営業職に限って募集をしたものだった。

 同社がこの制度を始めたのは、高岡浩三社長のアイデアがきっかけだ。芹澤さんが人事総務本部長に着任した昨年、こんなやり取りがあったそうだ。

 「『世の中、歳をとっても元気な人が多いよね。年金をもらえる年齢はどんどん延びていずれ65歳になるし、一方で若い人は減っている。だったら、60歳以上の人をもっと活用したらいいんじゃないの』と、高岡が言い出したんです。それはそうだな、ということで検討を始め、今年から具体的なアクションを起こしました」(芹澤さん)

 募集を始めてみると予想以上の応募が集まった。応募書類の全てに目を通しているという芹澤さんは、「ものすごく情熱的な履歴書を書いてくださる方が多い」と語る。「これまでの会社でお世話になった分、今後は社会に貢献したい」というシニア層ならではの気持ちを持つ人も目立つという。

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