人口8万人ほどの愛知県蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館は、お金なし、知名度なし、人気生物なしという、いわゆる弱小水族館だ。だが、条件面だけ見れば「ショボい」としか言いようのないこの水族館は、わずか8年前は12万人だった来場者数を40万人まで「V字回復」させた。その理由はどこにあるのか。個性集団とも言える飼育員たちの「チームワーク」と「仕事観」に迫り、組織活性化のヒントを探る――。
「ラッコやイルカがいないという、『劣等感』があるんです。僕たちは生き物に頼らずにお客さんに来てもらう方法を探すしかありません。水族館として邪道かもしれませんが、そうでもしないと生き残れません」
竹島水族館の小林龍二館長(37歳)は、穏やかな笑顔で話しながらも危機感をにじませる。現在の竹島水族館は「毎月が過去最高の入館者を更新中」なほど人気を博しているが、わずか8年前までは閑古鳥が鳴いて閉館寸前の状態だったのだ。
施設は狭く、予算は少なく、人員も少ない。常に新しいことを考え、周囲の協力を仰ぎ、お客さんに楽しんでもらえる努力を続けなければ水族館の存在はすぐに危うくなる――。小林さんは背水の陣を保って竹島水族館を引っ張り続けている。
生き物に頼らずに客を喜ばせる方法として、小林さんや副館長の戸舘真人さん(38歳)が注目しているのが土産品コーナーだ。竹島水族館らしい魅力的な商品を並べることができれば、それを目当てに来てくれる客も増えるし、大人500円という安い入館料での収入を補うこともできる。まさに一石二鳥が狙える分野だ。
定番商品の改革に関しては戸舘さんが担当している。そのくだりに関しては前回記事を参照してほしい(関連記事)。本稿で取り上げるのは、お土産品コーナーで爆発的な人気商品となった「超グソクムシ煎餅」だ。2016年春の発売から約2年半で2万個以上も売れている。
全国各地で売られているお土産品のほとんどは、企画会社や問屋が開発を請け負い、流通コストや在庫リスクも負担する。その代わりにマージンを取っている。各地の温泉まんじゅうのように、味や形状がどこか似ている商品が多いのはそのためだ。しかし、「超グソクムシ煎餅」は企画から原料の内臓処理、箱の組み立て、在庫管理まで、小林さんをはじめとする飼育員が行っている。正真正銘の竹島水族館オリジナル商品なのだ。
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