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日本の介護問題、処遇改善よりも効果的な人材不足への対応策をカギは高技能労働者(1/6 ページ)

» 2018年12月28日 08時00分 公開
[石橋未来大和総研]
株式会社大和総研
日本では介護人材の確保が困難となっている…… 日本では介護人材の確保が困難となっている……

 介護人材の確保が困難な理由の一つとして、介護職員の賃金が他産業と比較して低いことが指摘される。そのため政府は、介護産業と他産業との賃金差を縮小させるために、さまざまな処遇改善策を実施してきた。

 その結果、2009年度の介護報酬の改定以降、これまでに月額平均5.3万円相当の介護職員の処遇改善が行われた(※1)。しかしながら2017年度(平均)の有効求人倍率(パート含む)を見ると、介護関係職種(※2)は3.64倍と職業計の1.38倍と比較して高く、さらにその差は拡大傾向にあるなど介護分野の人材不足が依然として際立っている(図表1)

図表1 介護関係職種の有効求人倍率と完全失業率 図表1 介護関係職種の有効求人倍率と完全失業率

 本稿では、介護労働者の大半を女性が占めることに注目し、他産業の女性労働者との間で賃金を比較する。結論を先取りすれば、女性労働者との比較では、介護労働者の賃金は決して低いわけではない。それでも介護労働者の賃金が低いと言われる背景についての考察を踏まえると、介護人材不足を緩和するためには、処遇改善に加えて介護職員の負担軽減を図ることや、家庭との両立支援策を拡充することが重要である。

 さらに、より長期的に介護産業の生産力を高め、介護職員の賃金を引き上げていく観点からは、介護ロボットや人工知能(AI)の技術を使いこなして新たな付加価値を生み出すような高技能労働者の活躍できる場を提供することが、介護分野の人材不足解消のためにも必要である。

※1 平成29年度全国厚生労働関係部局長会議資料(1)社会・援護局 説明資料5「3 福祉・介護人材確保対策等について」(2018年1月18日)

※2 「福祉施設指導専門員」、「その他の社会福祉の専門的職業」、「家政婦(夫)、家事手伝」、「介護サービスの職業」の合計。

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