――残業規制によって、持ち帰り残業が増えてしまうとの予測もありますが、社員はどう対処していくべきでしょうか。
新田: 正直、どんなに個々人が努力して生産性を上げても、企業側が過剰なノルマを設定したり、労務管理をおろそかにしたりすれば、持ち帰り残業は生じてしまうでしょう。
そのため“ブラックだ”というレッテルを貼られたくない企業は、業務の棚卸しを行い、会社ぐるみで無駄な仕事をやめたり、減らしたり、場合によっては外注したりする必要があります。時間のかかる単純作業はRPA(Robotic Process Automation、PCの定型作業の自動化)に任せてしまってもいいかもしれません。
制度面も整備し、業務時間外は社用PCや作業データの持ち出しを禁止したり、社外からのネットワークアクセスを禁じたりする措置も、持ち帰り残業を防ぐ上で有効だと考えます。
――残業規制によって残業代が減り、社員の生活苦やモチベーション低下につながるのでは? との指摘もありますが、新田さんはどうお考えでしょうか。
新田: すでに残業削減に取り組んでいる企業を数社知っていますが、「みなし残業代」として固定費を支給し、残業を減らす前と同水準の収入を保証している企業はうまくいっています。社員は「残業しなくても稼げるのだから、早く仕事を終わらせて帰ろう」と考え、モチベーションが上がるようです。
転職を考えている人は、こうした残業規制への対応策などを率直かつ積極的に情報発信している企業を選べば、誤って“ブラック企業”に入社するケースは避けられるでしょう。
――ブラック企業が悪用できる、残業規制の抜け穴はほかにあるのでしょうか。
新田: 業務委託契約で働くフリーランス人材は残業規制の対象外となるため、ブラック企業に安い賃金で長時間働かされ、使いつぶされるリスクがあることは事実です。
業務委託契約で働く人材には、ソフトウェアやシステムの保守・運用などを行う「SES」(System Engineering Service)と呼ばれるエンジニアや、マッサージ業界で働く施術担当者などが多いです。こうした業界を志す人は、業務委託契約を結ぶ前に契約書をよく読み、おかしいと思った場合は決してサインしないでください。
「会社に縛られず、自由に生きよう」「満員の通勤電車に揺られる人生から脱却しよう」などと、フリーランスへの転向をあおり立てるような宣伝文句をよく耳にしますが、会社勤めの皆さんは聞こえのいい言葉にだまされず、デメリットを知った上でフリーランスになるか否かを考えておくべきです。
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