松坂大輔を悲劇の負傷に追い込んだ、“過剰ファンサービス”の行方赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)

» 2019年02月14日 11時00分 公開
[臼北信行ITmedia]
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ビジネスモデルが破たんしつつある

 プロ野球の各球団は純粋にファンサービスを行うことで、人気拡大につなげたい狙いがあるのは言うまでもない。しかし選手とファンの距離感が縮まり過ぎると、逆に弊害が生まれてしまうことも証明されてしまった。いとも簡単にサインをもらえるようになれば、転売を目論む悪質な偽ファンたちがハイエナのように目を光らせながらやって来るのだ。これではファンサービスを何のためにやっているのかと突っ込まざるを得ないし、本末転倒である。

 話を戻すと、刑事事件化しそうな松坂の負傷も、まったく同じことが言えるだろう。「ファンサービス」という名ばかりのことにとらわれ、中日側はファンと選手の導線を緩め過ぎていた“きらい”がある。確かに北谷キャンプは選手とファンの距離が近いと好評を得ていた半面で、「いつかとんでもない事故が起きるかもしれない」という指摘が出ていたのも事実だ。

 ファンサービスが、実はファンサービスにつながっていない――。所属選手たちの地道な努力によって、利益アップを計算していたにもかかわらず、そのビジネスモデルが破たんしつつある現状に球界全体が危機感を覚えるべきだ。

 ましてや復活を遂げた人気選手の松坂が、こんなふびんな形で選手生命を縮めてしまうようなことにでもなれば、それこそ目も当てられない。その損害はもはや金銭で解決できるような問題ではなくなってしまうだろう。

訂正:

初出時、「宿舎から球場入りまでの距離はあえてクルマではなく、自転車に乗ってやって来ていた」としていましたが、正しくは「球場からブルペンなどへの移動は〜〜」でした。現在は訂正しています。


臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2014年ブラジル)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2016年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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