例えば年収300万円、そのうち半分の150万円を消費に使っている人ならば、2%増税の負担増はおおよそ3万円だ。これが過大な負担で全額免除すべきという事なら3万円の現金を振り込むか、所得税を減らせばいい。
どちらがいいかは事務コストを比較して選べばいい。全国で数百万、数千万人にこういった対応をすればそれなりの手間だが、軽減税率に比べれば極めて低コストで事業者の負担もない。
それでも政府与党は軽減税率がいいというのであれば、高所得者がデパートでキャビアを買う際に税率を下げる必要はあるのか? 低所得者がマックでハンバーガーを食べたり松屋で牛丼を食べたりする際に、キャビアよりも高い税率をかける合理性はあるのか? 食品は生活必需品であることは間違いないが、年収1億円の高所得者に軽減税率は必要か? この問いに合理的に答える必要がある。
物理的な影響よりも心理的な影響、いわゆる痛税感に考慮しているというのであれば、それは全国の飲食店、小売店、そして税務署が対応に追われる手間とコストを天秤(てんびん)にかけて、それでもなお心理的な影響の方が大きいといえるのか? この問いに答える義務がある。
消費税の引き上げについては賛否が分かれてもおかしいと思わないが、「軽減税率が増税対策として他のどんな手法よりも優れた手法である」と考えることは、考え方や立場の違いではなく、単に合理的な考え方ができていないか、政治家がパフォーマンスを目立つ形でアピールしたいだけの話だ。
結論としては「高所得者は所得税が高くて大変だから、手間とコストをかけてもいいから軽減税率で還元してもいいじゃないか」という人だけが軽減税率に賛成すればいい。軽減税率に賛成する人、政党、政治家は金持ちの味方だと公言しているに等しい。
オムツや生理用品も軽減税率に含めろという主張も、軽減税率を認めているので金持ちの味方だ。筆者が突然、軽減税率はいい制度だと言い始めたら、コイツもうかってるなと思ってもらって間違いない。
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