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10年後「自家用車激減」の衝撃――オワコンになる意外な業界とは?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2020年01月24日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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 自動運転については懐疑的、批判的な声も多く、日本における自動運転の技術開発はかなり遅れている。だが諸外国では驚異的なペースで開発が進んでおり、レベル4(一定地域内での完全自動運転)で、時速50キロ未満の低速度車両であれば、2021年には本格的な自動運転サービスがスタートする見込みである。あっという間に新しい時代はやってくると思った方がよい。

実は地域経済にも打撃

 場所にもよるが地域経済への影響も大きい。自動車メーカー各社は、地域ごとに販売代理店を組織し、個人客に対して営業活動を行っているが、各地に展開している販売店は地域経済の要となっている。

 自家用車が減っても、その分だけカーシェアの台数は増えるので、自動車メーカーにとってはカーシェアへの販売を強化するという策が残っているが、主に一般顧客を相手にしているディーラーにとって、2割以上も市場が縮小するというのは大打撃である。もし本当にこれだけのペースで自家用車が減った場合、経営体力の弱い販売店は、経営を維持できないかもしれない。

 トヨタは、すでに国内販売店網の本格的な再編に乗り出しており、販売店をカーシェアの拠点にしたり、場合によっては介護サービスの拠点にするといった大胆なプランも検討中と言われる。

 自動車に対する価値観の転換は想像以上のスピードで進んでおり、10年後の自動車は今とはまったく違った姿になっている可能性が高い。何らかの形でクルマに関わっているビジネスパーソンは、従来の常識は全て捨てるくらいの感覚を持たなければ、時代に取り残されてしまうだろう。

※注記:損保ジャパン日本興亜側の指摘で、同社の記述に関して誤解を招く部分があり表現を一部変更しました(2020年1月30日午後7時更新)

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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