いずれにせよ、今回の新型コロナウイルスを巡るバタバタの意思決定により、非正規と正社員、フリーランスと正社員の間に立ちはだかる目に見えない壁の存在が顕在化し、その壁が為政者の言動によりますます高く、険しいものとなったことだけは明確です。
この先、新型コロナウイルスがどうなるかは分かりません。
しかしながら、「身分格差」は今後さらに固定化されることでしょう。2008年の年末に日比谷公園に作られた「派遣村」は、身分格差がもたらす「貧困」を可視化しましたが、12年の時を経て日本社会が「階級社会」になっていることが周知されているのです。
「格差社会」と「階級社会」は似て非なるもの。その大きな違いは、絶対的な固定化です。
格差なら本人の努力次第で成り上がることも可能です。しかし、階級社会では「落ちる」ことはあっても「上がる」のは至難の業。階級は「学歴、職業的地位、所得」などの社会経済的地位(socioeconomic status)が重なりあい構成されているため、「持てる者」と「持たざる者」で分断され、世代を超えて引き継がれていく可能性が高くなります。
かつて「ワーキングプア」が社会問題になりましたが、今後は「アンダークラス」が問題になると個人的には考えています。
早稲田大学教授の橋本健二氏の研究によれば、現下日本の階級は、資本家階級、新中間階級、正規労働者、旧中間階級、アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)の5つあり、アンダークラスの平均年収はわずか186万円。平均世帯年収は343万円ですが、63.8%は350万円未満、24.1%は200万円未満と厳しい状況におかれています。男性の未婚者が66.4%に上っていることからも、アンダークラスの男性が結婚して家族を持つことがいかに困難であるかが分かるはずです。
また、橋本氏の試算によれば、5年後の2025年にはアンダークラスは1000万人を突破するとみられるとのこと。東日本大震災で被害を受けた東北の人たちが「震災は高齢化の時計の針を一気に進めた」と口々に語っていましたが、新型コロナウイルスで「アンダークラスへの時計の針」は一層加速するかもしれません。
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