真夏の五輪にある程度の「犠牲者」がつきものだということは過去の大会でも証明されている。2008年8月に開催された北京五輪でも、夜8時の開会式で570人が熱中症で病院に担ぎ込まれている。
TOKYO2020も例外ではなく、熱中症でかなりの人々が医療を受ける前提に加えて、今の情勢で開催に踏み切ることは、感染拡大にも備えてなくてはいけない。予防や啓発も含めて外国人観光客に対してかなり手厚いケアもしなくてはいけないだろう。
そうなれば、そのための人件費、対策費用、実際にかかる医療コストも莫大に膨れ上がる。「五輪開催をすればチケット代や宿泊代、グッズ代でウハウハだ!」と無邪気に喜んでばかりもいられないと筆者が考えるのは、これが理由だ。
さらに、TOKYO2020による経済的損失は、大会が終わった後もズルズルと尾を引く可能性もある。それが(3)の「欧米豪、ASEANの観光客が離れて、インバウンドの『中国・韓国依存』がさらに強まる」である。
ご存じの方も多いかもしれないが、実は日本のインバウンドがあまりおいしくないのは、「中国・韓国依存」が強すぎることがある。フランスやタイなど観光立国に成功している国は、さまざまな国や地域から観光客が訪れる。その中には、リゾートでバカンスをする国や、豪遊が好きな国もあるので、長く滞在してそれなりにカネを落とす。ゆえに、観光収入もそれなりに高い。観光は稼げる産業になるのだ。
しかし、日本の外国人観光客は極端に中国・韓国が多い。このような周辺国からの観光客は、2泊3日などの短期旅行も多く、東京の人が箱根に行くようなノリで手軽に行けるので、そこまで贅沢(ぜいたく)をしない。ドラックストアや家電量販店でのショッピングなど普段の生活のような庶民的な観光に走りがちなのだ。
また、この2カ国からの団体客にホテルや観光業がドップリと依存するので、歴史問題や外交で対立をすると、すぐに「観光地が閑古鳥」なんて感じでダメージを受けてしまう。さらに依存の強い観光地では、中国・韓国マネーなくしてまわらない「観光植民地化」も進行してしまう。
そこで日本としては現在、欧米豪、そして経済成長著しいASEAN諸国からの観光客を増やして、観光収入もアップさせようとがんばってきたのだ。要するに、もはや「観光」が経済の大きな柱となっている日本にとって、過度な中国・韓国依存から脱け出して世界を相手にしなくてはいけないということである。
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