先日、朝日新聞社系のニュースサイト「withnews」の『単身赴任繰り返し、引っ越しは15回 「何のため、働いてきたのか」家族から孤立、50代転勤族の嘆き』という記事がネット上で話題になった。
会社に命じられるまま西へ東へと飛び回っているうちに、二重生活の出費が重くのしかかるだけではなく、家族との大事な時間まで失っていた、という「ハード単身赴任者」の訴えは大きな反響を呼び、コメント欄やSNSには「自分も転勤族の家で育ったのでよく分かる」「こんな時代遅れの制度はやめて欲しい」なんて声が溢れている。
ご存じのように、日本の転勤制度は世界の中でもかなり「異常」だ。
もちろん、どの国にも「転勤」という概念くらいはあるが、希望者が赴任するケースが大多数を占め、日本のように嫌がる者を説き伏せて赴任させるなんてことはない。世界では基本的に「契約社会」が多いので、労働者は会社に雇われた時点で互いに取り決めた業務だけを行う。つまり、日本企業のように定期異動でガラッと仕事が変わるなんてことはなく、それと同じ考え方で、「来月から九州支店へ行ってくれ」なんて調子で本人の意思を無視して勝手に勤務地を変えることはしないのだ。
海外の人たちからすると、「オレはこの20年で8回も転勤したぞ」「単身赴任に慣れすぎて、今や家族と会うのは正月くらいだよ、ガハハハ」なんてドヤ顔で語る日本のおじさんたちは、「クレイジー」の一言に尽きるである。
この世界的に見ても「異常な働き方」に近年メスが入っている。「望まぬ転勤廃止」を掲げたAIG損保のような企業に就活生の人気が集まっているほか、転勤を最大5年間猶予できる仕組みを導入しているキリンのような企業も増えてきているのだ。
いいことじゃないか、他の企業もじゃんじゃんやるべきだと思うだろう。筆者もまったく同感である。が、一方でこのような企業側の「働き方改革」だけでは焼け石に水というか、社会全体での「転勤」や「単身赴任」をなくすことはできない気がする。
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