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オリエンタルランド「ダンサー配置転換」の衝撃――非正規社員を“犠牲者”にしないために、いま求められるものとは?単なる「調整弁」にとどめるな(5/5 ページ)

» 2020年09月28日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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1社依存からパッチワーク型へ

 同様の観点から、一律に最低限所得を保障するベーシックインカムのような考え方も雇用労働システムを変える上で必要だと思います。ベーシックインカムと複数の仕事を掛け持ちするなど、収入源を1つに限定せず複数のパーツを組み合わせるイメージは、さまざまな布の一部を継ぎ合わせて1つの図柄をつくるパッチワークに似ています。

 働き手の就業スタイルが1社依存型ではなくパッチワーク型になれば、子育てに手が取られる時期は仕事を2つだけ掛け持ちし、子どもが成長したら5つに増やすといった調整もできそうです。

 そんな風に仕事選びのバリエーションが多様になり、働き手が常に複数の選択肢を持つような状態が実現すると、働き手は条件に合わない仕事に対して退職を選択しやすくなります。結果、企業としては今まで以上に働き手に選ばれる環境を整えることに注力する必要が生じます。

 生産年齢人口の減少などを背景に、労働力不足の未来を見据えた施策に取り組んでいる企業は、既に働き手から選ばれるための工夫改善を推進しています。そんな企業が現れ増えていくと、今度はそこで働きたいと考える人たちが企業から選ばれるように精進し、努力するという良い緊張関係と循環が生まれる期待があります。そのような変化が日本中で起きれば、雇用労働システムは自ずと変わって行くはずです。

 雇用労働システムを変えようなどと身構えてしまうとどうしてもハードルは高く感じられますが、コロナ禍で先が見通しづらい今でも、個々の企業で取り組めることはあるはずです。働き手が選択肢の幅を広げられるような柔軟な職場環境が増え、柔軟性を競い合うような機運が世の中に醸成されていくことを願います。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒業。テンプスタッフ株式会社(当時)、業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て2010年株式会社ビースタイル入社 。2011年より現職 (2020年からビースタイル ホールディングス) 。複数社に渡って、事業現場から管理部門までを統括。しゅふJOB総研では、のべ3万人以上の“働く主婦層”の声を調査・分析。 『ヒトラボ』『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰。NHK『あさイチ』など、メディア出演・コメント多数。 厚生労働省委託事業検討会委員等も務める。 男女の双子を含む4児の父。


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