なぜそんな誤報が起きるのかといえば、現在全世界でバッテリー生産はひっぱく状態にあり、新たに「電動車」マーケットに参入しようとするメーカーは、みなバッテリー供給で苦労をしているという現実を知らないからだ。いかにトヨタとはいえ、年産550万台のEVを作ると聞けば、自然に「そんなバッテリーを用意できるはずがない」と思って当然で、それが分かっていればこんな誤報はあり得ないのだ。
筆者は、昨今の電動化にともなって、バッテリーの供給がギリギリであることについて何度も警鐘を鳴らしてきたのだが、一方で「バッテリーの増産態勢はすでに整っており、何ら問題はない」とする対立意見を目にすることは多かった。今回の件で、供給問題があるのかないのかははっきりしたと思っている。ちなみにあるトヨタの幹部は「もし本当にバッテリーの増産が急伸しているサプライヤーがあるならば、ぜひ教えてほしい。今すぐにでも供給契約を結びたい」と筆者に言った。
ということで、バッテリーは足りないのだ。根源的な解決を図るには、グローバルにバッテリーの増産を図りたいところだが、多くの人が耳にしているように、次世代技術として、トヨタが開発中の全固体電池に大きな期待が高まっている現状を背景に、サプライヤー各社がリチウムイオン電池の増産に投資するのは難しい判断だろう。
プリウスPHVのシステム
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- RAV4 PHV 現時点の最適解なれど
トヨタはRAV4 PHVを次世代システムとして市場投入した。世間のうわさは知らないが、これは早目対応の部類だと思う。理由は簡単。500万円のクルマはそうたくさん売れないからだ。売れ行きの主流がHVからPHVへ移行するには、PHVが250万円程度で売れるようにならなくては無理だ。たった18.1kWhのリチウムイオンバッテリーでも、こんな価格になってしまうのだ。まあそこにはトヨタ一流の見切りもあってのことだが。
- 暴走が止まらないヨーロッパ
英政府は、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止すると発表した。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。地球環境を本当に心配し、より素早くCO2削減を進めようとするならば、理想主義に引きずられて「いかなる場合もゼロエミッション」ではなく、HVなども含めて普及させる方が重要ではないか。
- ようやくHVの再評価を決めた中国
中国での環境規制に見直しが入る。EV/FCVへの転換をやれる限り実行してみた結果として、見込みが甘かったことが分かった。そこでもう一度CO2を効率的に削減できる方法を見直した結果、当面のブリッジとしてHVを再評価する動きになった。今後10年はHVが主流の時代が続くだろう。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
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