クルマに関する欧州発のニュースが届いた。
英政府が、ガソリン車、ディーゼル車の新車販売を、ハイブリッド(HV)とプラグインハイブリッド(PHEV)も含め、2035年に禁止するという発表だ。欧州の主要国はすでに2040年前後を目処に、内燃機関の新車販売を禁止する方向を打ち出している。
英国政府は、かつて17年8月にも「40年にHVを含む内燃機関の販売を禁止する」と発表し、我が国にもあたかもオール電気自動車(EV)へ向けた規制の発動であるかのように伝えられた。しかしのちに、環境大臣がそのプラン実現のための具体的方策を問いただされ、正式な訂正発表もないまま、いつのまにやら「HVは含まない」と目標を訂正している。
その前例にこりずにまたもや同じような発表を、しかもスケジュールを5年前倒しにして語ったわけだが、今度こそ明確なロードマップがあるのだろうか? こういう取り組みは前倒しにするほど、意欲的であるように見えるが、結局根拠や方策がないまま早い期限を言うだけなら、「来年から」「来月から」「明日から」みたいなもので、小学生の「ボクの方がお前の1億倍速い!」と何も変わらない。5年前倒しの具体的方法論があってこそ初めて意味を持つものである。
英紙の報道によれば、ボリス・ジョンソン英首相は、「世界をリードしようとする気候変動への取り組みはカオスに塗れている」とのべ、「50年までにCO2排出を完全にゼロにする」ことを世界に呼びかけた。
2月4日、議長国を務める国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の関連イベントに登壇したボリス・ジョンソン英国首相(写真 ロイター)
志は誠に美しい。筆者も早期にEVの普及が進むことを祈るスタンスは変わらない。しかし英国政府のやり方は間違っているように思えてならない。例えば、貧富の差をなくすために、年収1000万円以下で雇用することを禁じたらどうなるか? それは雇用の激減を招くだけで、目的はかえって遠ざかる。自動車の環境規制に対して同じようなアプローチを取ろうとしているように見える。完璧にゼロエミッションであるEV(インフラ発電のCO2を見なかったことにして)だけに特化して対策が遅れるよりも、例え完璧ではなくとも、今ある手立てを早期に全部投入する方が成果は大きいはずだ。
- 水素に未来はあるのか?
「内燃機関が完全に滅んで、100%全てのクルマがEVになる」という世界は、未来永劫来ないだろう。そのエネルギーミックスの中にまさに水素もあるわけだが、FCVにはいろいろと欠点がある。しかし脱化石燃料を目標として、ポスト内燃機関を考え、その候補のひとつがFCVであるとするならば、化石燃料の使用を減らすために「化石燃料由来の水素」に代替することには意味がない。だから水素の製造方法は変わらなくてはならない。また、700気圧という取り扱いが危険な貯蔵方法も変化が必要だ。
- 自動車メーカーを震撼させる環境規制の激変
「最近のクルマは燃費ばかり気にしてつまらなくなった」と嘆いても仕方ない。自動車メーカーが燃費を気にするのは、売れる売れないという目先のカネ勘定ではなくて、燃費基準に達しないと罰金で制裁されるからだ。昨今の環境規制状況と、それが転換点にあることを解説する。各メーカーはそのための戦略を練ってきたが、ここにきて4つの番狂わせがあった。
- 日本のEVの未来を考える(前編)
EVの未来について、真面目に考える記事をそろそろ書くべきだと思う。今の浮ついた「内燃機関は終わりでEVしか生き残れない論」ではないし、「EVのことなんてまだまだ考える必要ない論」でもない。今何が足りないのか? そしてどうすれば日本でEVが普及できるのかという話だ。
- EVへの誤解が拡散するのはなぜか?
EVがHVを抜き、HVを得意とする日本の自動車メーカーは後れを取る、という論調のニュースをよく見かけるようになった。ちょっと待ってほしい。価格が高いEVはそう簡単に大量に売れるものではないし、環境規制対応をEVだけでまかなうのも不可能だ。「守旧派のHVと革新派のEV」という単純な構図で見るのは、そろそろ止めたほうがいい。
- トヨタの電動化ゲームチェンジ
世間からはずっと「EV出遅れ」と言われてきたトヨタ。今回、電動化車両550万台達成を5年前倒して2025年とするとアナウンスした。そのために、従来のパナソニックに加え、中国のバッテリーメーカー、BYDおよびCATLとも提携した。さらに、用途限定の小規模EVを作り、サブスクリプションモデルを適用するというゲームチェンジをしてみせたの。
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