にもかかわらずCAFEのルールでは、年を追うごとにPHVのEVモードでの義務走行距離をどんどん増やし、今すぐCO2問題を緩和できるPHVというソリューションを、どんどん庶民の手に届かないものにしているのである。これは欧州の病的な完璧主義だと思う。一部には、プリウスPHVを閉め出すために「新型が出るたびにプリウスのスペックを少しだけ上回るEV走行距離に、ルール変更している」という声もあるが、まあ証拠のないことをどうこういっても仕方ない。陰謀論に与したくない筆者としては病気だと考えておく。
さて、ちゃんと検証しなくてはならないのは、ジョンソン首相はきちんとしたロードマップを持ってEVオンリーの社会を提唱しているのかどうかだ。2月6日に行われたトヨタの第3四半期決算で、同社のディディエ・ルロワ副社長は、ジョンソン首相のスピーチに対する記者の質問にこう答えた。
「われわれも皆さんと同じく今週はじめのタイミングで知りました。今週月曜日(3日)の時点で、英国政府と情報をシェアしました。そこで『われわれの発表は決定事項という意味ではない』と言われました。あれは英国政府の望み(wish)とのことで、自動車メーカーやすべてのステークホルダーとディスカッションを始め、これから6カ月をかけて、製品をどうしていくかを確定していく意向だと聞きました」
さて、このトヨタの説明をどう受け止めるかはみなさんにお任せしよう。「トヨタは自分の都合の良い説明をしている」と考える人もいるだろうし、「妥協は良くない。政府が自動車メーカーを説得して、より厳しい基準を作り地球環境を改善していくべきだ」という人もいるかもしれない。
ただ地球環境が本当に待ったなしだったら、今やれることに着手すべきだと筆者は考えるだけである。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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