クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

暴走が止まらないヨーロッパ池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2020年02月10日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

普及しなければ環境改善はゼロ

 初代テスラ・ロードスターのデビューは2008年、日産リーフは2010年、すでに新世代のEVが登場して10年以上が経過しようとしているにも関わらず、EVの販売価格は未だに庶民の手が届くものになっていない。その結果グローバルでのEVの普及率は、いまだに2%を越えてこない。

 この連載ではすでにしつこいくらいに書いてきたように、バッテリーの価格低減と、急速充電器の爆発的普及を経ずして、EV社会はやって来ない(1月の記事参照)。それらEV普及の制約条件解消の目算が立っていないにも関わらず、闇雲に内燃機関の禁止期限を前倒しすることに意味があるのだろうか?

 翻ってHVはすでに普及価格に達している。例えばトヨタ・アクアや日産ノート e-POWERは、車両価格200万円以下で、ホンダのフィット・ハイブリッドは210万円程度で購入できる。現実の路上でも普及し、CO2削減に多大な貢献を果たしている。新型フィットはまもなく発売というタイミングだが、先代同様環境に貢献するだろう。何より雄弁なのはトヨタの新車販売台数の4割がすでにHVであることだ。

 これもすでに何度も書いているが、EVを1台もラインアップしていないトヨタは、世界のメーカーで唯一(EV専売メーカーを除いて)、欧州の温室効果ガス規制であるCAFE2020年規制をクリアできる見通しを発表している。この実績はほぼ100%HVによるものだ。

パリ協定が求める「2050年までにマイナス90%」というCO2削減のマイルストーンとして、30年の新車販売においてHVとPHVで450万台、EVで100万台(電動車合計550万台)を目標とするトヨタ。その後、計画を5年上回るペースで電動化が進んでいることを発表している(トヨタ資料より)

 もし、本気でCO2削減に取り組む気があるのであれば、こうしたHVの普及に加えて、プラグインハイブリッドの価格低減に国を挙げて取り組むべきだ。

 年間1万キロ走るユーザーにとって、日割りの平均走行距離は27.4キロに過ぎない。初代プリウスPHVのEV走行距離は26.4キロであり当時のバッテリーの容量はわずか4.4kWhに過ぎなかった。参考までに現在のEVは、最も容量の小さいバッテリーでも容量35kWh〜40kWhと、当時のプリウスPHVの10倍近いもので、それが価格高騰の原因になっている。どんなに性能が素晴らしくても、消費者の手に届かず、リアルな路上を走らない製品は環境問題の役に立たない。

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