日本郵政グループでは、非正社員が全体の4割弱を占めています。20年2月、非正規社員が全国6カ所で、正社員との格差是正を求める訴訟を起こしました。労働裁判としては異例の規模です。
訴状によると、正社員と非正社員の間で賞与や祝日手当の支給額に大きな差があるほか、住居手当、年末年始勤務手当、扶養手当などは正社員だけに支給されていることから、原告側は「労働契約が無期か有期かで不合理な格差をもうけてはいけないとする労働契約法20条に違反する」として、損害賠償を請求しました。
そのうち、3つの裁判の上告審判決で、最高裁は20年10月15日、扶養手当や有給の夏休み・冬休みなど審理対象になった5項目の支給を全て「正社員と非正社員の待遇に不合理な格差がある」と認定。これに応えて、会社側がした提案に「正社員の休暇を減らす内容」が含まれていることが分かりました。
会社側の提案は、「夏期・冬期の有給休暇」「年始(1月2〜3日)の祝日給」「有給の病気休暇」の3点で、期間雇用社員に夏冬1日ずつ有給休暇を与える一方で、正社員は2日ずつに減らす方針が示されていたとか。
また、年始の祝日給では正社員の割り増し分を廃止する一方、年始勤務手当を正社員・非正社員ともに増額。有給の病気休暇は新たにアソシエイト社員(期間雇用から無期雇用に切り替えられた社員)にも15日与えますが、正社員も含めて31日以上の療養が必要な病気に限るとしています。
これに対し、組合側が反対の意向を示したところ、年始の祝日給については、会社側が正社員の待遇を維持するよう提案を修正。一方、夏冬の有休や病気休暇については結論が出ていないそうです。
今回の郵政グループに限らず、「同一労働同一賃金」というお題目のもと、正社員の手当などを減額し、“均衡”させる動きはありました。しかし、今回の郵政の提案は、裁判の結果を逆手に取った狡猾(こうかつ)なコスト削減策。
日本郵政グループは、18年にも、組合からの同一労働同一賃金の要望を受け、それまで正社員にだけ認めていた住居手当を撤廃しています。
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