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「指示待ち」「官僚的」な社風が一変 湖池屋の好業績の陰に“人事改革”あり その中身は?“チャレンジできる社風”作り(1/3 ページ)

» 2021年11月25日 07時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 ポテトチップスでおなじみの湖池屋の業績が伸びている。売上高、経常利益ともに、右肩上がりを続けている。特に売上高に対する経常利益の伸びが健著で、2018年6月期に3億6300万円(利益率0.9%)と低水準だったものが、21年6月期には16億8700万円(利益率4.1%)を実現しており利益率の改善に目を奪われる。

 この改善について、決算資料ではいくつかの要因が示されている。その1つに高付加価値商品の売上伸長がある。17年に「湖池屋プライドポテト」という、高額だが素材や製法にこだわった新ブランドを立ち上げヒットさせた。これは、16年から取り組んだ「リブランディング」が成果を出したものといえよう。

 リブランディングというと一般的に対顧客目線のマーケティング施策に着目する向きがある。湖池屋の場合も、売上増はリブランディングによるマーケティング施策の成功に帰するところが大きい。しかし、同社の場合、マーケティング効果だけでなく、リブランディングをきっかけに組織の文化や風土の変革を進め、それが業績を押し上げる原動力にもなっている。人事の視点から湖池屋好調の理由に迫るべく、経営管理本部人事部部長の八代茂裕氏と同部次長の田畑健太郎氏に話を聞いた。

「官僚的組織」を、人事のアプローチでどう変えた?

 田畑氏は、「全体の調和を大切にするあまり、先例主義や根回し重視の官僚的な組織だった」とリブランディング以前の社風を振り返り顔を曇らせる。また、商品開発、営業、製造・物流の3つの本部の間に壁が存在し、お世辞にも風通しのいい組織とはいえない状態だったと付け加える。

 変化のきっかけは、キリンビバレッジで「FIRE」「生茶」などのヒット商品を生み出した現代表取締役社長の佐藤章氏の就任だった。湖池屋プライドポテトの「プライド」の文字が示す通り、全社員がポテトチップスの老舗ブランドとしての“誇り”をリブランディングにより取り戻すことから始めたという。

photo 左から経営管理本部人事部部長の八代茂裕氏、同部次長の田畑健太郎氏(取材はオンラインで実施した)

 「社員は元来自社の商品が大好き。湖池屋プライドポテトのヒットなど、リブランディング効果で官僚組織的な風土が影を潜め、社員が自信を取り戻し、リスクをとってチャレンジする文化が復活した」(八代氏)という。佐藤氏は就任時、ブランドブックを作成し社員に対し「新しいほうへ、難しいほうへ、面白いほうへ、イケイケ!」とチャレンジ精神を鼓舞するメッセージを盛り込んだ。

 それと同時に、チャレンジ意識を高める施策や制度改革も功を奏した。チャレンジに報いるMVP表彰を制定したり、プロジェクトやタスクフォース単位での仕事の進め方を推進したりすることで、社内に存在した“壁”が取り払われコミュニケーションが活性化し仕事にスピード感が生まれたという。

経営陣が挑戦する姿に、社員も「仕事を自分ごと化」

 それにしても、ブランドを再構築することで組織の風土や社員の意識を変えたという点に驚かされる。「リブランディングやそれに関連した施策を経営が打ち出すことで、会社としてチャレンジする姿勢を示すことができる。それがメッセージとして社内に伝搬し社員の意識が変わった。トップダウンによる指示待ちの姿勢ではなく、仕事が自分ごと化し内発的な取り組みが始まる」(田畑氏)のだという。

 ただ、チャレンジにはリスクがつきものだ。失敗を許容する文化がなければ、誰もリスクを取らないのではないだろうか。「チャレンジを求めることで会社の側も社員に負荷がかかることは理解している。たとえ失敗してもそれを許しそこから学んで次に挑むことの大切さも同時に説いている。失敗しないということは、チャレンジしていないことと同義という意識は社内で共有されている」(八代氏)と胸を張る。

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