社員のチャレンジを後押しする最大の施策という意味では、17年に実施した人事評価制度改革も大きなウェイトを占めている。「勤続年数、性別、年功序列といった従来型の仕組みから脱却し、チャレンジや役割を軸にした評価を構築した」(田畑氏)そうだ。いわゆる成果主義に移行したわけだ。
ただ、この新しい人事制度は、運用を開始した直後から軌道修正を余儀なくされた。「新しい評価制度の枠組み自体に問題はなかったが、コンピテンシー(社会性)を軸にした評価を導入したことから、評価者と被評価者の両方から『分かりにくい』『複雑すぎて評価が大変だ』といった声が多数あがった」(田畑氏)という。
そこで、20年に評価基準を「チャレンジ」「成果」「役割」の3階建て構造にし、特にチャレンジを重視する仕組みに変えたそうだ。「コンピテンシーという主観性の高い評価軸とは異なり、期初に自律的に設定したチャレンジを期末においてどの程度達成したのかという評価軸は、評価する側される側の双方で分かりやすく、透明性も高いため評判がいい」(八代氏)という。
ただ、ひとくちにチャレンジといっても、生産現場、営業、商品開発など社内にはさまざまな職種があり、全ての社員が自分にとってのチャレンジがどういうもので、どのような目標を設定すればいいのかを理解するのは難しい。そこで、前述のようにチャレンジした人を表彰するMVP制度を復活させ規範を示したり、説明会を頻繁に開いたりして、「チャレンジというのはこういうものだということを伝え、各部門で職種によりチャレンジの内容を定義することで社員が目標を設定しやすいようにしている」(田畑氏)そうだ。
ここで、1つ疑問も生じる。さまざまな職種のチャレンジを同じ評価軸で評価することができるのだろうか。新商品がヒットすると売上増という形で数字に表れる、そのようなチャレンジは、成果が華々しく可視化され誰にでも理解しやすい。しかし、生産現場やバックオフィス系の職種で実施される改善活動といった地道なチャレンジは、不利になるのではないだろうか。
「小さく地道なチャレンジもしっかりと評価の対象にするということをいつも意識している。ヒット商品に関与した人間ばかりが評価されるようなMVP表彰や評価の仕組みだと、全社的にしらけてしまうのでそこは気を付けている」(八代氏)そうだ。
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