脱東芝の「レグザ」、国内トップシェア争いまでの復活劇家電メーカー進化論(4/9 ページ)

» 2022年01月18日 07時00分 公開

ハイセンス傘下ならではの巨額の投資とコストダウン

 この状況が大きく変わるのが15年だ。東芝本社で発覚した不正会計疑惑により、家電事業全体も窮地に立たされる。テレビ事業は、家電全般を担当していた子会社である東芝ライフスタイルから分割され、東芝映像ソリューションとなり、その後17年11月に中国のハイセンスグループへ発行株式の95%が売却された。

 東芝のネガティブな報道が連日続き、会社の先行きも不透明になったことなどで、レグザの人気も急速に低下していく。シェアは最終的に12〜13%まで下落したそうだ。

 また体制の変更に伴って、商流も変更。東芝時代は、販売会社を通して製品を量販店へ卸していたが、ハイセンスグループになったことで、販売体制の見直しも迫られた。量販店から見ると口座や取引先が変更になったことで、ここでも混乱が発生。これもシェア下落の一因となった。

 しかし中国市場ナンバーワン、世界市場4位のハイセンスグループの傘下に入ることは決してマイナスではなかった。

 「我々は、世界市場で戦うハイセンスグループに、レグザの技術力はすごいと認められて入ったと思っています。買収に当たって東芝へ戻った社員もいますが、映像づくりのキーマンは全員残っていますので、基本的に開発力は変わっていません。むしろ、ハイセンスグループ入りしたことで加速しています」(本村さん)

レグザに搭載している映像プロセッサなどを開発している、永山研究開発センター。レグザを象徴する高画質化機能などは今でもここで開発されている

 最も大きいのは調達コストだ。世界シェアには名を連ねなかった東芝1社での調達力と、世界トップクラスの調達力はレベルが違ったと本村さんは語る。さらに製品開発で最もコストがかかる金型へ投資もハイセンスと共有でき、テレビの組み立てもハイセンスの最新鋭工場が使えるなど、メリットは多かった。

 「レグザブランドの製品はすべてオリジナルデザインです。ただベースの金型などは、ハイセンスのものを使うこともあります。例えば77インチの有機ELテレビのような高額商品は、販売数はそれほどないのに、金型だけで数億円かかります。つまり、日本国内の販売だけだと作れません。それがハイセンスグループの金型として、我々も使えるのです」(本村さん)

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