カインズに売られた「東急ハンズ」は、なぜライバル「ロフト」と差がついたのかスピン経済の歩き方(7/7 ページ)

» 2022年01月18日 09時45分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「しなやかさ」を学べるか

 そのカインズが、東急ハンズの再建に乗り出す。ベイシアグループが得意とするPB開発力とDX領域を活用することに、東急ハンズファンの皆さんは否定的な意見が多い。「カインズの商品が並ぶようなハンズはもう行かない」なんてことを言う人もいる。

 しかし、これまでカインズがやってきた「しなやかなPB展開」を見る限り、カインズ製品をハンズ側にゴリゴリ押し付けるようなことをするとは思えない。

 同じベイシアグループのワークマンは「がんばらない」を掲げていて、「しない経営」が有名だ。カインズも似ているところがあって、オウンドメディア『となりのカインズさん』などを見てもかなり脱力系企業だ。「カインズらしさ」「カインズならでは」なんて力みは感じない。エドウインとコラボしたワークウェア「EDW」などが分かりやすいが、コラボ先の相手をしっかりとたてるので、「オレが、オレが」と前に出る感じでもない。

 東急ハンズはこの30年以上、「品ぞろえがすごい」「店員がプロ」などと肩肘を張って突っ走ってきた。店員たちもファンの信頼を裏切らないように心がけてきた。その重圧に押し潰されてしまった部分もあったはずだ。

 ここらで一休みして、カインズやワークマンのような「脱力系企業」のカルチャーを入れてみるのもいいのではないか。巨人ベイシアグループの「しなやかさ」を学んだ東急ハンズが、どんな魅力的な売り場を見せてくれるのか期待したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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