人口146万人を擁する政令指定都市・京都市は、深刻な財政難で知られる。実質的な借金総額は8600億円に及ぶといい、市は21年5月、企業の倒産と同じ「財政再生団体」に28年度にも転落する可能性があると公表した。転落すれば国の管理下に置かれ、予算の計上や新規事業の実施といった「自治」が不可能になる。過去に陥ったのは、北海道夕張市だけだ。
市の行財政審議会がまとめた報告書では、市の財政がひっ迫するに至った要因として、地下鉄東西線を初めとする平成初期の公共事業を挙げる。当時はバブル期。建設費は予想以上に膨らみ、多額の市債を発行して借金返済を将来世代に先送りしてきたことが、現在に重くのしかかっている。
将来見込まれる借金などの負担の重さを表す「将来負担比率」を見ると、市は191.1%(19年度決算)となっており、20ある政令指定都市の中で最も高い水準となっている。
しわ寄せは値上げとなって利用者らに迫る。市は6月1日、所管する138施設の料金見直しを実施。世界遺産の二条城(中京区)は、二の丸御殿も含めた観覧料を1030円から1300円に値上げしたほか、市動物園(左京区)の大人の入園料を620円から750円に引き上げた。
市交通局が運営する地下鉄や市バスも例外ではない。今年3月に公表した市営交通の中長期経営計画で、早ければ24年度頃をめどに、地下鉄で7%程度、市バスで8%程度の運賃値上げを盛り込んだ。
現在、市営地下鉄の初乗り運賃は、全国の公営地下鉄で最も高い220円。市バスの均一運賃区間も最高水準の230円で、「全国一高い」と称される運賃はさらに上がる可能性がある。
ちびキャラを使った今回の経営状況の「見える化」は、こうした厳しい財政状況に対する強い危機感の裏返しとなっている。市交通局の担当者は「ちびキャラのようなキャッチ―なツールを使わざるを得ない状況にまで来ている」と明かす。
市交通局では7月以降、ちびキャラを生かしたマンガのコンテンツを増やし、情報発信を強化する予定。
「これまでは白書やレポートなど成果物を出して終わり、というところがあった。今後は漫画を使った積極的な発信を行い、市営交通の利用促進につなげていければ」と担当者は話している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング