ファミレスは危機に陥っている!? サイゼリヤとガストで明暗が分かれたワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2022年11月15日 06時38分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

店舗数が増えているサイゼリヤ

 サイゼリヤはコロナ禍でも店舗数を増やし、19年8月には1504店だったが、22年8月には1547店と43店も増えている。しかし、それは海外店をカウントしているからだ。国内だけを見ると、19年8月の1093店に対して、22年8月には1069店で、24店減っている。ガストの減少数とそう変わらない。

サイゼの郊外店

 ファミレスは危機に瀕(ひん)しているとよくいわれるが、サイゼリヤの一時期の落ち込みも、相当厳しかったことがうかがえる。

 サイゼリヤも、ガストなどと同じく近年、コロナ前はちょい飲み需要で伸びていた。また、飲酒運転の規制が厳しくなったため、郊外ロードサイドから、駅前に店舗をシフトしていた。赤と白のグラスワインがたった100円です飲めるのも、サイゼリヤの魅力。

サイゼリヤはちょい飲みも売りの1つ

 ちょうど、大人数の宴会が減って不振に陥っていた「和民」「笑笑」などの総合居酒屋が撤退した跡地の駅前商業ビル、複合ビルの空中階、地階に、サイゼリヤやガストは入れ替わるようにどんどん入っていった。居酒屋化していたので、お酒の自粛が響いた。

 コロナ禍で、サイゼリヤの屋台骨が揺らいでくると、20年2月には浅草にパスタに特化した「伊麺処(PASTADOKO)」、同年11月には日本橋茅場町にミラノ風ドリアをメインに据えた小型店「ミラノ食堂」をオープンするなど、新業態にも果敢に取り組んだが、共に失敗した。

浅草にあったサイゼリヤの新業態、伊麺処(パスタドコ)。狙いは良かったが惜しくも撤退

 顧客のマスクに紙ナプキンを装着する、「じゃべれるくん」というオリジナルの食事用マスクを考案。マスク会食の推進を目指したが、これも実りがあったとはいえなかった。

 20年の第1回目の緊急事態からしばらくは、サイゼリヤの打つ手が決まらず、迷走している印象があった。

サイゼのしゃべれるくん

 しかし、もともとサイゼリヤは、19年12月に発売した「アロスティチーニ(ラムの串焼き)」が爆発的なヒットとなり、品切れが続出。商品調達を整備した20年1月と2月は、既存店売上高が前年同月比で105%、107%と、上り調子だった。それまでは前年の売り上げを下回る月が3カ月間続いていたが、反転した。

サイゼの爆発的ヒット「アロスティチーニ(ラムの串焼き)」(出所:サイゼリヤ公式Webサイト)

 コロナ禍もある程度落ち着くと、顧客がアロスティチーニを思い出し、サイゼリヤに戻ってきた。サイゼリヤでしか売っていないから、お店に行かないと食べられない。今もアロスティチーニは人気で、夜に行くと売り切れていることがしばしばある。このヒット商品のおかげで、サイゼリヤのちょい飲みはかなり復活してきている。

 また、以前はイタリアから直送したジェラートなどのスイーツの数が少なかったが、今はメニューブックを丸ごと1ページ占拠している。

 平日500円とワンコインの安価なランチは、9種類と豊富で、100円でドリンクバーも付く。

サイゼの500円ランチ(出所:サイゼリヤ公式Webサイト)

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