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特需が過ぎ去ったデータベース業界だが、新たな成長に向けてオラクルは「ファイルシステムの基幹データベース化」という次の一手を打っている。データベース業界のリーダーとして、全く新しいパラダイムの市場創造へと踏み出した。

年の瀬も押し迫った12月19日、日本オラクルの2003年5月期の中間期決算が発表された。経済低迷を反映した厳しいコストプレッシャーによって、売上高、経常利益ともに大幅に減らした。しかし、オラクルはデータベース業界のリーダーとして、「ファイルシステム」の基幹データベース化を推進し、新しいパラダイムのデータベース市場創造へ果敢にチャレンジしようとしている。日本オラクルの新宅正明社長に話を聞いた。

ZDNet 先ごろ発表された日本オラクルの業績発表を見ても、2002年は厳しい年だったのではないでしょうか。データベース業界にとって、あるいはオラクルにとって、ここ数年を振り返っていただけませんか。

新宅 データベースやエンタープライズアプリケーションは、1999年から2000年、そして2001年初めまで、その普及・成長の勢いは凄まじいものでしたが、それも2001年半ばから様相が変わってしまいました。しかし、2003年半ばには落ち着きを見せ、前年同期比でフラットになるとみています。

 かつては特需があったが、それがなくなったと考えればいいでしょうか。それでは、「明日にも再び特需があるか」と聞かれれば、それはないでしょう。

 既に導入された企業は、必要に応じてシステムを更新していきますので、着実なデータベースの需要は見込めます。ただ、大企業であっても、かつてのような大規模案件は少なくなり、代わって小規模な更新、小規模なシステム構築をスピーディーに行いたいという要望が増えています。

ZDNet それは世界的な動向ですか。

新宅 はい、こういう経済情勢ですから、企業はROI(Return On Investment)志向が強く、3年の期間で成果が上げられないITプロジェクトは打ち切ってしまいます。「このソリューションであれば、どういう成果が得られるのか」を重視しているわけです。そこでIT業界も、例えば、コストが低く抑えられるLinux対応製品やアプリケーションのサービス化などを提案することによって、顧客らのニーズにこたえていく必要があります。

ZDNet 調査会社の市場予測を見ても、今後数年、データベース業界は大きな成長が見込まれていません。

新宅 確かに、需要はあっても価格は下がっています。いわゆるデフレ現象です。そこで、われわれも自助努力をしなければなりません。

 伝統的な自助努力としては先ず、競争に勝ち抜く、ということがあるでしょう。例えば、コストが低く抑えられるLinux対応製品を提供したり、われわれのアプリケーションをもっと使ってもらい、全体のITコストを引き下げ、さらにシステム更新を実施してもらうという取り組みです。

 また、日本の製造業が中国大陸への進出を加速させていますが、われわれも拠点を展開し、企業が新しい市場環境に適応していく際には、信頼に足るパートナーになりたいと考えています。

 もう1つの自助努力、これは新しい市場を創造するというものです。先ほど、調査会社によるデータベース市場の予測について話がありましたが、彼らは業務アプリケーションのデータを格納する用途しか見ていません。われわれは、もちろん業務データの市場はきちんと獲得して強固なものにしていきますが、磁気化されていながら管理されていないデータは、ほかにも膨大にあります。文書、音声、イメージ、電子メールなどですね。

 これらの膨大な磁気化されたデータは、これまでPCサーバをたくさん購入し、例えば、Windowsのファイルシステムに格納されてきました。デスクトップPCやノートブックPCに大切な情報が保存されている場合もあるでしょう。オラクルではそれらすべてを基幹となるデータベースで管理することを提案していきます。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]


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